読書という航海の本棚＞地震、テロ、核爆弾 - 紀伊國屋書店ウェブストア｜オンライン書店

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洋書 Goodbye California

著者のアリステア・マクリーンは、「昭和…

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著者のアリステア・マクリーンは、「昭和」のベストセラー作家。多くの作品が翻訳され、『SFマガジン』掲載の早川書房の新刊リストで、よく目にしていた。しかし、冒険小説の分類だったので、手に取ることはなかった。本書もその一冊。その表題から、主人公がカリフォルニアを去るというような展開を勝手に想像していた。米国版の『日本沈没』だと知ったのは随分後になってからだったが、意識から消えてしまっていた。
　ところが、昨年、『日本沈没』の英訳を読んだ後に（コメント参照）、突然、本書を思い出し、急に読みたくなったのだ。幸い、新装版（2020年）として再出版されていたので（初刊は1977年）、２カ月かかったが、入手できた。
　サンフランシスコ地域が太平洋へ沈むという背景として大地震が想定されているのだが、この小説では、自然災害ではなく、テロリストが核爆弾を爆発させることで、未曽有の大地震が引き起こされるという設定である。
　しかしながら、プレートテクトニクスの原理や危険な断層に関する記述もあり、Japan　Sinksの刊行が1975年だったことを考えると、著者が小松左京の小説に影響を受けた可能性もあるだろう。
　マクリーンは、米国人にとって恐怖である自国への核攻撃と、新たな脅威となりつつあったテロを融合させた展開にまとめたのだ。
　ロサンゼルス近郊の原発がテロリスト集団に襲撃され、放射性物質が奪われる。そして、原子物理学者に加え、そこで働いていた主人公である刑事の妻も拉致される。息子も警察官として登場し、妻と母を救う捜査が進む中、テロリストによる核爆弾を使ったカリフォルニア州破壊計画が明らかになる。
　この緊張感の連続が、著者の真骨頂のようだ。ただ単純に、虚構ということを理解したうえで、進行を楽しめばよい。娯楽小説の典型だ。
　個人的には、一時代前を楽しむ読書にもなった。通信手段としての公衆電話、暗号としての速記、また、２ドル札紙幣が登場する件では、思わず、一人悦に入った。（学生時代に偶然手にした１枚は、今でもお守りとして財布に入れている）
　この小説が2020年に再刊されたのは、「テロ」、「核」、「自然災害」が地球規模になりつつあるという情勢が背景にあるのかもしれない。

タグ地震、テロ、核爆弾

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