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和書共通感覚論岩波現代文庫

表題にある「共通感覚」という表現に出会…

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表題にある「共通感覚」という表現に出会ったのは、同じ著者がまとめた岩波新書の『術語集』の中だった。もっとも、この本は、インターネットが普及する前の時代に、辞書的な位置づけで購入したので、熟読をした記憶がない。
　なかば意識から薄れていた言葉に再会したのは、今年になって『脳の中の美術館』（布施英利、筑摩書房）を読んでいる時だった。本書の一節が、宗教画の「イコン」を説明する件で書名の紹介と共に引用されていたのだ。「聴覚的な絵画」という予想外の記述に心が騒いだ。
　あわてて、『術語集』に戻った結果、この概念は「コモンセンス」（常識）との関連として記述されていることが再確認できた。読み直すと、このカタカナ表記は「共通感覚」と訳すべきだとの意見を擁護する展開となっている。英単語の並びを見れば、もっともな指摘である。
　この流れで、『共通感覚論』を入手し読んだ次第だ。岩波現代文庫版は2000年が初版で、購入したのは2019年の第10版だが、1979年に刊行された本である。市場から消えてもおかしくない月日が経過しているが、再刊される内容がある。
　本書は、単なる語彙の解説ではない。言語論以上に、哲学的であり、芸術的であり、なによりも身体的な感覚論になっている。「常識」という人口に膾炙した単語の陰で、忘れ去られてきたて「共通感覚」というコモンセンスへのもう一つの視点を復活させた論述は、色褪せることなく読み継がれてきたのだ。
　回顧的な展開なのだが、近未来への意識も刺激をうける。いずれ、人工知能が五感を所有するようになるだろう。例えば、「痛み」を人とロボットが分かち合う状況を視野に入れると、これからは、『共通感覚論』の対象に機械を含めるのもいいかもしれない。

タグ共通感覚、人工知能

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