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洋書マルクス『資本論』第１巻（英訳） Capital : Volume I (Capital)

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今回の読書を後押ししてくれたのは、2021年の6月に読んだ浅田彰の『逃走論』（ちくま文庫、コメント参照）だ。その際、カール・マルクスに、今まで感じなかった親近感を感じられるようになったのだ。その勢いで、岩波文庫（９分冊）ではなく３分冊のペンギンブック版を購入していた。
　それから２年経って、ようやく第1巻を読み終えた。浅田は、『資本論』でのユーモアについて言及していたが、たぶん、虐げられた労働者への愛情を、マルクスの筆致に感じてのことだろうと思う。
　ユーモアは笑い話ではない。人間観察の視点が根底にある。子どもたちの長時間労働、劣悪な住環境、増加する列車事故による死者等、経済学理論の前に、私には、マルクスがロンドンで見聞きした貧困にあえぐ悲惨な英国の労働者の状況の報告書に読めた。
　ヴィクトリア朝の煌びやかさに隠された闇の部分の暴露本である。資本家が労働者の血を吸うvampireで表現されている件があるが、ここでは、ブラックユーモアを超えたホラーの気配が感じられた。
　スティーブン・キングもThe　Standという長編小説の中で、『資本論』の表題をドイツ語表記で人生を変える本としてさりげなく書いていた。この怪奇作家も、マルクスの週刊誌的な具体的で生々しい描写に魅せられたのかもしれない。
　不謹慎な私は、結果的に、翻訳者が冒頭で紹介したマルクスの文学的素養を英語で楽しんだのだが、読了後に、学生時代に読んだ『本はどう読むか』（講談社現代新書）に書いある資本論の紹介で、清水幾太郎が「これほど面白しろい本は、世には多くはないであろう」と断言していたことを思い出して、納得できた次第。
　この難解な内容を十分に理解したとは思っていないが、「長い間誤読されてきた」（佐藤優『野蛮人の図書室』講談社）らしいので、極めて私的な読みかたでもいいような気がしている。
　しかし、1000頁でも終点には来ていない。あと２冊残っているので、ゆっくりと進んでいこうと思う。そうすれば、もう少しまともな読後感を書けるかもしれない。

タグマルクス、資本論、ヴィクトリア朝

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