読書という航海の本棚＞マニエリスム、脱領域 - 紀伊國屋書店ウェブストア｜オンライン書店

1 ～ 1件／全1件

洋書 Mannerism : The Crisis of the Renaissance and the Origins of Modern Art (Paperbacks in Art History) （Reprint）

本書の存在を知ったのは、2021年の年…

コメントを全て表示

本書の存在を知ったのは、2021年の年明けから若桑みどりの『イメージの歴史』（ちくま学芸文庫、コメント参照）を読んでいる時だった。原著はドイツ語のため、著者自身が翻訳したアーノルド・ハウザー『マニエリスム―ルネサンスの危機と近代芸術の始源』（1970年）を探したが、入手困難だと分かり、英訳版をその年の１月末にウェブ紀伊國屋の古書で注文。3,710円という奇跡的な金額だった。円安が進む前だったからだろう。２年以上の時間をかけてじっくりと読んできた。
　カヴァーを飾るのは、有名なイタリアの画家パルミジャニーノが1535年に描いた『長い首の聖母』。本文中でも、この画家の傑作として解説されている。ハウザーが取り上げたマニエリスム様式に分類される絵画、彫刻、建築は、巻末に図版あるいは写真でまとめれていて、その数322。解説本体でも392頁ある大著。邦訳では３分冊。
　三部構成の中で、マニエリスムについての一般的な解説、16世紀にイタリアのフィレンツェから始まる歴史、そして、20世紀中の視点で見る「現代」のマニエリスムについて、関連分野まで含めて、丁寧に説明してくれている。
　若桑みどりは、自著のなかで、この本を「美術史研究」の参考文献として挙げていたが、読んでみると、その内容は、美術に限らず、科学的宇宙観の誕生とか資本主義の台頭というような思想に影響を与えた社会的変化等もマニエリスムの背景として論述している。さらに、「詩」を中心に、西欧文学におけるマニエリスムにまで視野を広げ、最終章では、プルーストとカフカの作風をまとめに使っている。
　「脱領域」の極みがここにある。直線的ではなく、逍遥する筆致は、まさに蛇状曲線。この解説書自体が、マニエリスムだ。

タグマニエリスム、脱領域

1 ～ 1件／全1件

紀伊國屋書店

読書という航海の本棚

洋書 Mannerism : The Crisis of the Renaissance and the Origins of Modern Art (Paperbacks in Art History) （Reprint）

会員ログイン