読書という航海の本棚＞ホーガス、美、蛇状曲線、マニエリスム - 紀伊國屋書店ウェブストア｜オンライン書店

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洋書 The Analysis of Beauty -- Paperback / softback

著者のウィリアム・ホガースは18世紀の…

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著者のウィリアム・ホガースは18世紀の英国の画家。この作者を知ったのは、1982年に読んだ『路地裏の大英帝国』（平凡社）のカバーに使われた絵を見た時だ。「落ち着かない絵」という第一印象を今でも覚えている。
　ホーガスの作風について、高山宏は「画面のどこかに「崩壊」ないし「転落」の添景を潜ませることが多い」と書いていた。（『庭の奇想学』ありな書房、2017年１月読了）上記の絵でも、街中の階段に座った母親から子供が頭から落ちていく場面が描かれている。
　このような大衆画家が、「美」を分析した解説書を1753年に残していたことを知って、ウェブ紀伊國屋で見つけた2015年の新装版を購入して一気に読み終えた。（邦訳はない）
　『美の分析』という表題には学術書の響きがあるが、筆致は一般向けで読みやすい。再版に際しての米国の編集者による巻頭言には、「美術専攻の学生むけに図版の位置などを調整した」との説明がある。
　印象的だったのは、美の対象としての人体についての論述だ。筋肉や皮膚の下部にまで注目していて、「美体の解剖学」と言えるような内容にもなっている。カバーからも分かるように、美の真髄としてＳ字曲線を挙げている。これは「蛇状曲線」としても説明されている。執筆当時には、この用語は使われていなかったのだが、明らかに「マニエリスム」の効果を述べている。この微妙な曲線が描く女体は、「美」を醸し出しながらも、その不安定さから「不安」も感じさせる。
　鯨の骨の解説もあり、もしかしたらメルヴィルはこの本を読んでいたのではないかと思いを巡いらした。
　全体として、適合、多様、規則性、簡素、複雑、量、そして線という視点から理路整然と「美」の秘密に迫る本書の内容は、今でも、意匠や絵画等の創作に関心がわる人々にとって、有益な助言と視点が含まれていると感じだ。
　蛇足だが、江戸時代の浮世絵師、菱川師宣の『見返り美人図』にも、このＳ字技法が隠れている。

タグホーガス、美、蛇状曲線、マニエリスム

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