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和書パサージュ論〈１〉岩波文庫

2022年の読書の旅への門出を飾るのは…

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2022年の読書の旅への門出を飾るのはこの一冊。昨年末に５冊まとめて購入しておいた。岩波文庫版で2020年の12月に初版が刊行されて、手軽に読めるようになったのが嬉しい。
　本作品を必読書と位置付けたのは、2020年の３月に『雑学者の夢』（多木浩二、岩波書店）を読んだからだ。この本では『パサージュ論』が、５か所で引用あるいは言及されており、第２章では「書物を超えた書物」として27頁にわたり、丁寧に解説されている。芸術学の専門家である著者を「思想的に刺激しつづけている書物」の中身をどうしても確認したくなったのだ。
　購入した文庫の帯には「断片の集積に潜む「あり得たかもしれない世界の模索」とある。ベンヤミンの死により、書籍として編集されていないので、執筆途中のメモ書きを読むことになるわけだ。しかし、この小片の羅列に魅了されることになる。読み進める際に、事実、情報、印象、発想などの知の粒子が浮遊し、時には融合したり、反発したりするような風景が目にうつる。まさに「万華鏡の勝利」(p435)である。
　表題から最初に推測できる内容は、18世紀末にパリに作られた天井付きの商店街の歴史・文化的的な記述である。「パサージュ」の写真を見ると、メルボルンのRoyal　Arcadeを思いだす。
　元気なうちにパリも再訪したくなったのだが、本書で描かれているのは、観光案内ではない。人々の意識に記憶として残るもう一つの世界なのだ。数多くの著述から引用も、異空間への覗く窓となっている。境界線としての門、異界としての地下、憂鬱としての雨天、退屈の治療薬としての群衆。異形なエッフェル塔。通読を拒む体裁の中で驚愕し、そして酩酊する仕掛けが、見え隠れする。
　この迷路にまだ足を踏み入れたばかりだ。急ぎたくはないが、気がつくと巻２を手にしている自分自身がいる。

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