読書という航海の本棚＞カラヴァッジョ、夢 - 紀伊國屋書店ウェブストア｜オンライン書店

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和書風神雷神Ｊｕｐｐｉｔｅｒ，Ａｅｏｌｕｓ〈下〉ＰＨＰ文芸文庫

下巻は一気読みだ。宗達が「風神雷神図」…

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下巻は一気読みだ。宗達が「風神雷神図」を完成させる場面を期待していたが、物語は、日本を遠く望む帰途の船旅にでるジェノヴァの港で終わる。この展開は仕方がない。なぜならば、帰国後まで話が進むと、いやでも天正遣欧少年使節の４人が目の当たりにする過酷な史実を避けてとおれなくなる。
　訪欧の過程で青年に成長した若者達の志を、夢見心地のままで終わらせるのは、絶妙な構成。そこでもう一人の青年が登場する。若き日のイタリアの画家カラヴァッジョだ。裏表紙にその記述があるので、「隠し玉」的な存在ではないが、その役割を理解するには、イタリアの現代作家アントニオ・タブッキがしたためた『夢のなかの夢』（岩波文庫、コメント参照）に登場するカラヴァッジョの夢想を読むとよいかもしれない。
　その夢の中で、キリストがカラヴァッジョに言うのが、「おまえを探してパレスチナから歩いてきたのだ。」である。この場面を、原田ハマの小説にあてはめると、そのまま宗達の気づきにつながる。「おまえを探して日本から船でやってきたのだ。」と。
　エピローグで現在に戻るが、夢は覚めてはいない。この冒険談は、描く描かないにかかわらず、「絵心」を大切にする人々の胸に永遠に抱かれていくのだ。「風神雷神図」がある限り。従って、この２冊は、カバーが見えるように書棚から飛び出すように収納した。小さいながらも圧巻だ。
　蛇足だが、カラヴァッジョの名前と作品を知ったのは、『天使と悪魔の絵画史』（辰巳出版、コメント参照）を読んだ時だった。掲載された「受胎告知」という作品をあらためて見ると、まさに夢の一場面だ。宗達との会話で話題にでたであろう天使が描かれている。

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