紀伊國屋書店出版部7月の新刊『巨大化する現代アートビジネス』
約7兆6200億円規模のアート業界を動かしている「100人」とは?
人気アーティストはいかに生みだされるのか?
億万長者はなぜアートに大金をつぎこむのか?
アートにどのように値段がつくのか?
年に一度、イギリスの『アート・レビュー』誌は、アート界で最も力のある100人の名士録「パワー100」を発表する。アーティストや画商・ギャラリストにとっては売上、コレクターにとっては入手した作品、学芸員・キュレーターにとっては企画した展覧会が判断材料となるこのランキングは、2008年の第1位がイギリスの型破りな現代アーティスト、ダミアン・ハースト、09年が話題の企画展を次々手がけるスイス人キュレーター(ハンス・ウルリッヒ・オブリスト)、10年が知名度のあるアーティストを独占的に抱える世界的なギャラリスト、ラリー・ガゴシアン、11年が中国人アーティスト、艾未未(アイ・ウェイウェイ)、13年がオイルマネーを背景に作品購入に数百億円を投じるカタール国王女...とアート界の「現在」を如実にうつしだしている。
しかし、そのランキングには日本人の名前はめったに見つからず、2003年の村上隆氏の7位が過去最高位で、14年には草間彌生氏が52位、東京現代美術館キュレーターの長谷川祐子氏が90位にランクインしているのみ。アート作品の競売(オークション)の世界でも、中国とアメリカが売上シェア80%近くを占めるなか、日本は1%未満。ユニークなアーティストは次々生まれているのに、アートフェア(見本市)や国際展でも日本が話題になることは稀である。
なぜ日本は立ち遅れたのか?――定評あるフランス人ジャーナリストふたりがアートが投機・投資対象となったゼロ年代のアートの現場を取材し、現代アートビジネス界がいかに機能しているかに果敢に斬りこんだ一冊から、現状を打開するヒントが見えてくる。
類書のない一冊、ぜひご一読を!