内容説明
開戦前夜、日米極秘交渉が行なわれたとされる、箱根の富士屋ホテル。戦後、マッカーサーを迎えた横浜のホテルニューグランド。フィリピン大統領一家が亡命した奈良ホテル。中には百年以上の歴史を誇る名門ホテルは、昭和という時代にどのような役割を果たしてきたのか。富士屋ホテル創業者の曾孫である著者が、その秘められた謎に迫るノンフィクション。『消えた宿泊名簿―ホテルが語る戦争の記憶―』改題。(解説・川本三郎)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
41
ホテルという非日常の空間だから行われた秘密会議。歴史を動かしていたかもしれなかったそれらと、戦時中においても揺らぐことのなかったホテルマンの矜持。まったく知らなかったことばかりで、とても興味深く読ませていただいた。戦時下や占領中の日本をこの目でありありと見た気がした。2015/04/15
てくてく
5
富士屋ホテルの創業者、山口仙之助を曾祖父とする著者によるクラシックホテルと昭和史に関する物語。戦争のような非常時のセーフティゾーンとしてのホテルに関する蘊蓄が面白かった。奈良ホテルに疎開していたラウレル大統領の五男(サルバトール、後に父親同様に政治家になる)の手記を読んでみたいと思った。2026/02/03
千本通り
5
帝国ホテル旧館はアメリカが誇る建築家フランク・ライト・ロイドによる設計で、もし残していたら世界の名建築の一つとなってアメリカから多くの観光客が押し寄せただろうと言われているが、この本を読むと、建設当時の面影を残していたのは玄関とロビーだけで、米軍の接収時代に宴会場は白いペンキで塗りたくって往年の姿とは似ても似つかぬものになった。家具類も米軍の規格化された大型のものを入れて、ホテルに前からある物でも修理に出されると、すっかりあちら式に変形して戻ってきた。米軍が自らライトの面影を破壊していたのだ。2022/10/23
駄目男
5
都市を爆撃する場合、代表する高級はテルは好き好んで爆撃しないという説があるそうだが本当だろうか。空襲がなかった奈良ホテルや箱根の富士屋ホテル、軽井沢の万平ホテルはともかく、マッカーサーが宿舎とした横浜のニューグランドホテルが戦災に遭わなかったのは不思議だ。第一生命ビルも被害に遭わずGHQの総司令部になっている。あながちデタラメの話しでもない。国内のクラシックホテルに留まらず占領政策の一環として接収された大東亜共栄圏の名だたるホテルの歴史などを紐解き接収されるホテルの運命とはどういうことか掘り下げている。 2018/04/08
dzuka
4
戦中の箱根富士屋ホテルの経営者の子孫が語る、富士屋ホテル、奈良ホテル、帝国ホテル、ホテルニューグランドなどのクラシックホテルにまつわる話。 文化財としても有名な富士屋ホテルだが、身内でしか知りえない物証から紡ぎだされる歴史の秘話が実に面白い。日米和平交渉や、接収のエピソードなどは、ため息が漏れた。 この本でも語られているが、ホテルとはやはり異空間。その異空間を作り出す人たちの構想や日々の努力には頭が下がった。だが、それを踏みにじる帝国ホテルの改装の話などは、呆れた。犬山市に現存した形の謎が少し解けた。2023/06/13




