内容説明
戦史研究の第一人者が日米の世紀の決戦を描く
今、もっとも読みたい軍事史の第一人者、『独ソ戦』『天才作戦家マンシュタイン』の著者、大木毅による初の語り下ろし作品!
太平洋戦争のターニングポイントとなった「運命の海戦」をあらゆる角度から語り尽くす。
圧倒的に有利だった戦いで無残な敗北を喫したのはなぜか。
生き残った海軍士官たちによる周到な「隠蔽工作」によって「神話化」され、真実からほど遠いところで論じられてきたミッドウェイ海戦を、内外のさまざまな史料を駆使し、何がわかっていて、何がわかっていないのか、その研究の最前線を紹介する。
真珠湾攻撃の巨大な勝利によって、“勝利病”――驕りと慢心――に蝕まれた機動部隊司令部は、危機を示唆するあらゆる兆候を無視し、握りつぶしたまま戦場へと突入した。虎の子の四空母を失うという「すべてが失敗した」海戦は、いつの間にか人間の力を超えた「運命」によって負けたという話にすり替えられていった。
澤地久枝氏の孤軍奮闘によって明らかにされた「運命の五分間」の欺瞞も、海外の最新研究が明かした事実を交えて再検証。
「現代のマハン」と呼ばれる米海軍大学の名教授が「離心的(エキセントリック)」と批判する、目的が分散していく作戦構想の欠陥など、今、わかるミッドウェイ海戦のすべてがここにある!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
98
今日本で戦史ものを書かせたらこの人の右に出るものがいないだろうと思える位の著者による、コンパクトにまとまったミッドウェー海戦史。語りおろしのため読みやすい。特徴は真珠湾攻撃などミッドウェー以前の海戦史から、海軍が何を学ばなかったかということを丁寧に書いているところ。また戦闘後、その敗戦を最小限に見せるために糊塗することが、1945年の敗戦後も続いていたことも押さえてあり、その中で澤地久枝の業績を高く評価している。著者は別に山本五十六の評伝も出しており、その内容との重複は当然あるが、読む価値のある書と思う。2026/06/29
kawa
38
太平洋戦での日本軍の「おわりのはじまり」となったミッドウェイ海戦がテーマ。従軍関係者の陸か海かの兵装転換中の攻撃が敗因と言う分析、「作戦目的の曖昧さ」が主因で兵装問題は結果であると指摘。さらに、南雲機動部隊は事前のセイロン沖、珊瑚海での海戦の戦訓を活かせず、傲慢・油断の弊に陥っていたとする。曰く、空母戦では航空機消耗が激しく数の力で押し切る教訓に気付かず、逆に戦力を分散させてしまった。その他、索敵、暗号解読、情報軽視などの問題も論述。聞き書きスタイルの執筆が、結果として読み易く仕上がっていることもグッド。2026/09/28
yoneyama
30
まだこの時点で戦力は上だったのに慢心だらけで負けた、という。戦後も生き延びた海軍官僚たちがカッコつけで通説をネッてきた経緯も。源田実が議員にまでなったので、みな忖度したのだ。空母戦は損耗戦、艦攻艦爆の損耗はエグい。まだ誰も知らなかった最前線だからこそ学ぶべきだったセイロン沖と珊瑚海海戦。南雲中将死人に口なし。「妾の子でも勝てた」とまでいい捨てる尊大社会こそ敗因なのだが、若者たちが不憫だ。「独ソ戦」の著者が語り書きの形なので、その文献と発言者の信憑性などを勘繰りながら進める文体がライブ感あっておもしろい。2026/10/13
ピオリーヌ
27
文春新書2026年の刊。今回は、既に約束した企画を多数抱えており、新しい書き下ろしを予定に入れられないという事情から、語り下ろしという珍しいスタイルとなっている。大変読みやすいが、いつもの大木節ではなく少しばかりの物足りなさも感じてしまうのは私だけか?内容について。軍事の原則に作戦目的の単一性というものがある。ところが日本海軍はいつも複数の目的を設定する。これは官僚組織としての海軍の癖であり、達成が難しい本当の目的に、もっと簡単な目的をくっつける。そうしておけば、簡単な方を達成しただけで作戦成功という 2026/08/25
MUNEKAZ
17
往年の半藤一利やシバリョのごとく語り下ろしということで、さくさく読める。ミッドウェイ海戦を巡る論点をおさらいするには、良いんではないでしょうか。勝ちまくっていたが故の「慢心」が、あいまいな戦略や戦訓の軽視を生み、しっかりと準備をしてきた米機動部隊にやられる。著者はこの慢心を日本人の宿痾と呼ぶが、真珠湾のときのアメリカもたいがいなので、とどのつまり用意したシナリオから離れて現実を評価するというのが、いかに困難かということかと。戦後の海軍士官たちの印象操作も、ドイツの国防軍神話の生成を想起させて興味深い。2026/10/14




