内容説明
「あなたの人生を円グラフで表現してください」大学院生の僕は、エントリーシートを書くのをやめて、小説というフィクションを書き始める。青山の占い師、80億円を運用する自称凄腕トレーダー、偽ロレックスを腕に巻く漫画家。小説家・小川哲が遭遇する怪しげな人物たちの末路……。成功への渇望と満たされぬ承認欲求の果ての嘘と真実を描いた、傑作連作短編集。後日譚「革命前夜」を収録。(解説・大森時生)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
27
就活をすることに葛藤する本好きの大学院生と恋模様を描いた冒頭作を皮切りに、作家になった彼が怪しげな人物たちと遭遇する連作短編集。就活のエントリーシートで詰まって小説を書く道を選ぶプロローグに、東日本大震災前日に何をしていたか思い出せない人々、友人の妻が入れ込む青山の占い師、大金を動かす金融トレーダーとなっていた高校時代の友人の炎上、偽ロレックスを巻く漫画家との出会いや受賞エッセイ、後日譚などが収録されていて、いろいろな人との遭遇で波紋を投げかけられ、冷静に考察してゆく彼のありようがとても興味深かったです。2026/06/24
Shun
25
作家と同名の主人公視点で描かれる連作短編集。大学院に在籍中の小川哲は、既に社会人となった交際相手との関係もあり就活を始めようと発起する。エントリーシートを取り寄せ、自分の人生を円グラフで表現せよという設問で筆を止め哲学的な思索を始めたりと中々進まない。この時点で主人公の人となりや思考の癖が表現されているようで、本作が描かんとしている方向性に興味を抱いた。私小説のようなフィクションを通して描かれる様々な人たち。占い師に傾倒する者や、自称凄腕トレーダーといった虚栄心に人生を振り回される人間たちの業たるや。2026/07/11
イシカミハサミ
18
著者と同名の“小川哲”を主人公とする短編集。 “はず”という語彙について。 はず、ということは、 それを手に入れた未来を想像し、 手に入らなかかった現実が訪れた、ということ。 とある動画で見たところでは、 文字を読めない人間は見たことのない風景について 何かを推定する、ということをしないという。 文字で、虚構を綴る、小説世界で、小川哲が、虚構に出合う、物語。2026/07/31
ひめありす@灯れ松明の火
15
【新潮部2026】丁度作中に登場する楽曲を聴きながら移動中に読んでいたのでびっくりでした。多分この作者の方は私と同世代だと思われます。そう言う空気感。このお話の主人公の小説家の小川さんと仲良くなれそうかというとそうでもなさそうですが自分の脇腹を刺されているような痛さを感じつつ読み終えました。長編も面白いよと友人に勧めて貰ったので折を見て読んでみようと思います。2026/07/28
baboocon
13
新潮文庫の100冊2026。作者と同名の小説家になった主人公が語る形式の連作短編集。「嘘」が共通のテーマになっているのかな。表題作「君が手にするはずだった黄金について」と「偽物」は如何にも現代的なネット上での承認欲求をこじらせた者の末路を描いている。「三月十日」は誰もが忘れられないあの日の前日に自分たちは何をしているのか思い出そうとする話で新鮮な切り口だった。2026/07/15




