内容説明
「何も私は芸能人やセレブが住む高級なタワーマンションを買おうっていうんじゃないのよ。庶民的な小さなマンションでいいの。その程度の物件も買えないって、この世の中はどうなってんの?」
大学受験を乗り越え、正社員として勤めている史緒里と大河。贅沢もせず真面目に暮らしているのに、都内にマンションの一つも買えないことに、史緒里は怒りとため息を抑えきれない。そんな時、都内の一等地には空き家が増えているというニュースが流れてきた。駅チカの家なのに、誰も住まずに朽ち果てていくなんて……。二人が早速、空き家の見学に行くと、近所の老婦人が話しかけてくる。隣の一軒家に一人で暮らし、日々の食事も宅配のお弁当ですませているという彼女に同情した二人は、その家の雑務をこなしたり、食事に誘うようになる。やがて彼女から、あなたちのような人に、この家を譲りたいと言われるようになり……。
一方、母が暮らしていた田舎・風穂町の実家の処分に思いを巡らせていた星野路代は、実家の売却を決め、地元で同級生が営む不動産会社を訪れる。そこで思わぬ販売価格を聞いた彼女は、夫とともに海外旅行の計画を立て始める。優雅な生活を夢見る路代だが、いつまで経っても購入者は現れず、何度となく販売価格を下げてく。同時に、ブログで田舎の良さをアピールしようと、様々な工夫を凝らしていく。そんな折、この家の購入に興味を持った史緒里と大河から連絡を受けるのだが……。
『老後の資金がありません!』の著者が描く、真面目でコミカルな現代住宅事情。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
191
垣谷 美雨、3作目です。 旬の作家による旬のテーマ、人間模様が複雑に絡み合って切実な思いですが、楽しめました。続編もありそうな展開です。 https://publications.asahi.com/product/25954.html2026/06/09
旅するランナー
174
都内の家賃·物件高騰や職場のストレスから逃避するために、田舎への移住をやってみる人たち。が、そこには田舎の人間の保守性·閉鎖性·固執性による執拗な攻撃が待っていた。ここまでエグく田舎民のイヤらしさを描かれると、地方再生なんてあり得ないと思えてきます。外国人による不動産の売買と、全国の負動産の増加を抑制する、国民目線の政策を政府には求めたい。2026/06/06
いつでも母さん
144
キャッチーなタイトルだわね垣谷さん。田舎に住む私のこれからの問題の一つに実家の始末がある。あちこちで空き家問題も見たり聞いたりしている。保存もお金、壊すもお金、買い手は無い。そう!現実問題なのだ。そこに相続が絡んだりもするのも現実だ~。今回は多分賛否が分かれるだろうと想像する。この田舎・・確かにそこまで踏み込んで聞く?聞いたが最後その話の広がる速さったらなのだ。ゾッとするばかり(ほっとけーと声が洩れる)が、田舎ここまで酷い?時は令和だぜ。勿論良いところもあるのよ・・多分。あぁ、次の次の世代に幸あれ!(汗)2026/05/30
Ikutan
72
人口減少で空き家問題は深刻なのに、東京都内では庶民的な中古マンションでも一億円以上。垣谷さん、いつもながら身近な問題を取り上げるのが上手い。維持費ばかりかかる田舎の古びた家は不要。60代夫婦は、田舎の実家を売ろうと躍起になるが、なかなか売れない。一方、在宅勤務がメインの共働きでそこそこ収入のある同棲カップルは、都内での購入を諦め、田舎への移住を考え始める。どちらも問題は山積ですね。それにしても、田舎の閉塞感や感覚のズレは誇張なのか、現実なのか。移住を巡って揺れる心がテンポよく描かれ、面白く読んだ。2026/05/20
yuni
51
読後感は爽快というより心がズーンと沈みました。空き家、相続、不動産価格、人間関係といった問題は、どれも簡単な答えがなく、自分自身も当事者になり得るかもしれないからです。特に印象に残ったのは、IターンやUターンしてきた人に対する勝手な憶測やレッテル貼り。これは地方に限らず都会近郊にもあり、噂を娯楽として消費する文化には息苦しさを覚えました。現代社会が抱える問題を鋭く描き出した作品。今は資産価値がある不動産も10年先はどうなっているのか?不動産問題の怖さは家そのものより「先送りしたくなること」なのかも…。2026/06/05




