内容説明
医療費が高額になった場合、自己負担額を一定に抑える「高額療養費制度」。自己免疫疾患の治療で長年この制度を利用してきたジャーナリストは、2024年冬に政府が発表した「改悪」案に不安と憤りをおぼえ、取材を開始する。疾患当事者や研究者、政治家などの証言が浮き彫りにしたのは、健康に「格差」がある日本社会の現状や、セーフティネットとして十分に機能せず、〈世界に冠たる〉とは到底いえない医療保険制度の姿だった。複雑で入り組んだ高額療養費制度の問題を、一般書として初めて平明かつ多面的に解明する!
目次
はじめに
第1章 高額療養費制度とは何か
第2章 part1 政治的・財政的背景から読み解く〈見直し〉案
第2章 part2 患者団体はどう〈見直し〉案凍結を実現させたのか?――天野慎介氏に訊く
第3章 2024・2025年〈見直し〉案は何が問題だったのか?――安藤道人氏に訊く
第4章 高額療養費制度に潜む「落とし穴」を検証する――五十嵐中氏に訊く
第5章 「魔改造」を施された日本の医療保険制度と高額療養費制度――高久玲音氏に訊く
第6章 part1 司法の観点から高額療養費制度を検証する――齋藤裕氏に訊く
第6章 part2 立法の観点から高額療養費制度を検証する――中島克仁氏に訊く
第7章 「健康格差」解消のために、どのような医療保険制度を構想すればよいのか?――伊藤ゆり氏に訊く
第8章 大局的な視野で日本の医療保険制度と高額療養費制度を捉える――二木立氏に訊く
おわりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
130
『銭ゲバ』の蒲郡風太郎は高額療養費制度の開始前、病気の治療費が払えず母を亡くしたことから犯罪に走った。そうした貧富差から来る健康格差を埋めるセーフティネットとして機能してきたが、2024年に公表された見直し案は費用負担増で治療を諦めさせる意図があるとしか思えない内容だった。見直し案撤回に奔走した著者や関係者インタビューから浮かび上がるのは、現行の国民皆保険制度がツギハギだらけの代物であり、国民全体が貧しくなった21世紀日本では制度の維持が難しくなっている現実だ。当たり前が通用しない時代の直視を訴える1冊。2026/07/14
アキ
73
高額療養制度に関して2024年末に見直し案が提出された背景に、岸田内閣が2023年に打ち出したこども未来戦略の財源を確保するための社会保障改革で、法改正が不要な制度に着目した面があることが示唆される。日本の国民皆保険制度は寄せ木細工のような皆保険であり、全体像が把握しにくい。高額療養費は医療費全体の約6%であり、世界的にも自己負担上限額は欧州と比較して日本は高額である。自身が関節リウマチでこの制度を長年利用しているからこそ、説得力ある論理を展開している本書で、一番納得できたのは二木立氏との一問一答でした。2026/05/24
1.3manen
40
父親が、1月3日、某病院ECUに入院し、1週間で高額療養費+b+cで、8.3万円払わされた。てか、父親の口座残高をみて、私が立て替えたのだった。その負担が増えるなら、もう、そろそろお迎えがくるのがいい、とでもいうのか? 家族が立て替えているのだ。兄貴のギャンブル依存症のせいで、だけど。。ま、自己負担割合が3割なんて、どの世代や年収でも同じじゃ、困るよ。。2026/07/04
よっち
23
自己免疫疾患の当事者であるジャーナリストの著者が、2024年末に突然浮上した高額療養費制度の改悪案に危機感を抱き、取材を重ねてまとめた1冊。1ヶ月の医療費が一定額を超えた場合に自己負担を軽減する高額療養費制度。複雑な制度の数字や仕組みを、著者の実体験や専門家インタビューでわかりやすく解説しながら、所得・加入保険・世帯構成による健康格差の実態を浮き彫りにする内容で、加入先による格差や、今は問題なくてもがん・難病・不妊治療など、誰にでも起こりうる状況を考えると、他人事でいていいのかいろいろ考えさせられました。2026/06/17
awe
9
スポーツ関係のジャーナリストでありながら自身が高療の制度利用者であることを契機に、畑違いの分野(高療ひいては社会保障制度の諸課題)について取材し、まとめた一冊。(ジャーナリストとはいえ)この分野の素人が一から書いているわけだが、それが逆に本書の圧倒的な分かりやすさに繋がっている。非常に勉強になった。◆報道ベースでも指摘されていたことだが、なぜ突然高療の自己負担上限見直しが行われることになったかと言うと、加速化プランで少子化対策財源を捻出することが至上命題となるなか、法改正を伴わず制度改正のコストが比較的2026/04/26




