内容説明
かつて使われていた「スポーツ選手」や「競技者」は、いまや「アスリート」という言葉にとって代わられている。それはいつから起こり、そしてその背景にはなにがあったのか。ファッションモデルとして雑誌の表紙を飾り、その姿勢や精神性がビジネスにも応用可能とされる「アスリート」。その言説空間を明らかにする。
なぜ、「アスリート」という語が、現代社会において一般化していることが重要なのか。 それは、日本社会における「アスリート」という語の登場とこの語の使用(の増加)が、スポーツ文化の新たな意味や何らかの変容を示唆する重要な現象であると考えられうるためである。 ーー「はじめに」より
目次
はじめに:アスリートを考えることからみえてくる現代スポーツ文化の疑問
第I部 現代社会におけるアスリートへの接近
序章 アスリートに関する学際的研究
1 これまでのアスリート研究
2 変貌する〈アスリート〉像
2―1 人種、ジェンダー、障がいという視点から見たアスリート
2―2 主体化するアスリート
3 本書の位置づけ
4 本書の構成
第一章 スポーツ文化としての「アスリート」へのアプローチ
1 理論的枠組の提示
1―1 解釈主義的立場からの言説分析
1―2 社会学的アプローチとしての言説分析
1―3 歴史的アプローチとしての言説分析
1―4 言説分析モデルの提示:「共通性――合意モデル」と「差異――葛藤モデル」
2 本研究における言説分析のスタンス:計量分析の活用範囲とその限界
3 アスリート言説を分析するための対象の設定
4 スポーツ文化として形成されるメディアにおけるアスリート言説
第II部 アスリートにまつわるスポーツの歴史と現在
第二章 近代スポーツの歴史――“athlete”と「アスリート」の登場
1 近代スポーツの発生とその展開
1―1 イギリスにおける近代スポーツの発生
1―2 パブリックスクールにおけるスポーツ教育
1―3 階級区分を示す〈スポーツする主体〉の登場:「プロ」と「アマチュア」
2 近代オリンピックの誕生
2―1 クーベルタンの競技教育とオリンピズムの思想
2―2 組織・機関が養成する〈スポーツする主体〉の登場
3 アメリカにおけるスポーツの歴史:メディアに登場する「ヒーロー」と「スター」
4 明治期におけるスポーツの受容:日本におけるプロとアマチュアの発生
5 英語“athlete”と日本語「アスリート」の現代的使用の特徴
5―1 UNESCOの国際憲章における英語“athlete”の使用
5―2 わが国のスポーツ政策に関する公文書における「アスリート」の使用
第三章 新聞報道における用語「アスリート」の計量分析
1「アスリート」の語を使用した記事数の変遷:読売新聞と朝日新聞
1―1 一九二〇年代から一九八〇年代までの「アスリート」の使用傾向
1―2 読売新聞・朝日新聞における一九九〇年代の「アスリート」の出現数の推移
2 計量テキスト分析による用語「アスリート」の傾向
2―1 関連語・共起ネットワーク分析
2―2 階層的クラスター分析
第III部 メディアにおけるスポーツ文化とアスリート言説
第四章 アスリート言説によって編成される〈スポーツする主体〉の特徴
1 従来のプロ/アマの区分を無効化する〈スポーツする主体
2 健常者との平等化をめざす「障がい者」という〈スポーツする主体〉
3 個人主義的な〈スポーツする主体〉:自立と社会貢献
4 身体を自己管理する〈スポーツする主体〉
5 自己表現としての〈スポーツする主体〉
6 アスリート言説によって編成される〈スポーツする主体〉の機能
小括 要点の整理
第五章 スポーツの言説空間を創生するアスリート言説
1 「社会的」活動を通じて主体の「商業的」側面を正当化するアスリート言説
1―1 有森の「プロ宣言」において何が問題視されたのか?
1―2 「商業的」活動を〈スポーツする主体〉の主体化として正当化するアスリート言説
ほか



