臨床に生きる

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臨床に生きる

  • ISBN:9784344694538

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内容説明

住んでいる地域特性や民族遺伝子で症状の進行は異なる――

目の前の患者と向き合うことで生まれた新しい概念“PBM”
そこに至る過程を追うことで見えてくる臨床医の意義と魅力

医療の世界では、エビデンス・ベイスド・メディスン(EBM)――「根拠に基づく医療」が重要だとされています。しかし、そのエビデンスは多くの症例から導かれた“平均値”であり、必ずしも目の前の患者一人ひとりにそのまま当てはまるとは限りません。生活習慣や遺伝的要素など、患者の数だけ異なる条件があり、同じ病気でも最適な治療は変わり得ます。
年間約10万人の外来患者を診察する宮田眼科病院の院長として、著者は40年以上にわたり臨床の第一線に立ち続けてきました。そのなかでEBMだけでは応えきれない症例に数多く向き合ってきました。そうした経験の積み重ねからたどり着いたのが「ペイシェント・ベイスド・メディスン(PBM)」という新たな概念です。膨大な患者データを基に、出身地や生活歴、遺伝情報などに着目し、治療を個々人に最適化していく――それが「人間に基づいた医療」であるPBMです。
2022年刊行の前著ではPBMとは何かを解説しましたが、本書では改めてPBMに至るまでに経験してきた多くの臨床実例を具体的なエピソードとともにまとめています。臨床の現場では、毎日の大学の講義や医学の教科書からは決して知ることのできない、想定外の出来事が起こります。そしてそれを解決する唯一の手段は、患者と徹底的に向き合うことです。 今回、焦点を当てるのは知識や技術の細部ではなく、むしろ「臨床という現場の意義と魅力」です。臨床の現場で患者から学び、研究し、その成果を再び臨床に還元する――この循環が、人を救う医師としてのやりがいだと思います。
これからの医療を担う若い世代にこそ届けたい、臨床の価値と可能性を再発見する一冊です。

目次

はじめに
第1章
臨床は常に学びと発見の場
医学にはいまだ無数の未知がある
屋久島で見た、自然の驚異
イソギンチャクを持って診察室に現れたAさん
イソギンチャクの毒による障害を12年かけて論文に
目の前の患者から学ぶことで新たな着想を得る
医師としての成長とその使命を果たすために
患者の光を取り戻すことができるのは眼科医だけ
第2章
治療のヒントは目の前の患者が教えてくれる──
医学書に載っていない答えを模索する日々
軍人上がりの父が開いた6床の眼科病院
母の病が教えてくれた眼科の力
麻雀に夢中になって成績が急降下した中高時代
車にはねられ意識不明の重体、浪人生活を余儀なくされる
若手にも開かれていた挑戦の舞台、東京大学眼科学教室
患者との出会いが導いたフィブロネクチン研究
他大学での学びを後押ししてくれた上司への感謝
視力を守るために張り巡らされた巧妙な仕組み
角膜内皮細胞は増殖しないのか? 新たな真実に挑む
自宅にまで顕微鏡を持ち込んだ修練の日々
常識を覆した「角膜内皮細胞は増殖する」という発見
40年越しに実現した大きな夢
入局6年で異例の講師に
恩師の教えと人との出会いが研究を育てた
異分野との協力が医学を前に進める力
失敗もまた財産となる
エキシマレーザー研究にかけた夢と挫折
患者に学び、患者に還す
救えなかった患者の記憶が残したもの
眼科という「幸せな病棟」で経験した喪失
一通の手紙から始まった私のライフワーク
治療できる手段があるのに実行できない
忘れ得ぬ1996年4月──らい予防法廃止の衝撃
親子二代でつむいだハンセン病患者との関わり
「いつか治したい」という誓い
第3章
患者一人ひとりのために”を突き詰める──
臨床の積み重ねで見えてきた新しい概念
都城に築いた拠点で臨床と研究をスタート
新しい環境に身を投じ、診療に没頭する日々
「人がいる場所に医療を届けたい」── 分院展開の決断
利便性も含めて患者の利益を考える
東京分院を決意した意外な理由とは?
都市と地方を結ぶスキームを確立
若手医師の教育機関としての役割
「人との関わり方」も含めて医師を教育
わずか2㎝の臓器に広がる多彩な専門性
開業医だからこそできる研究への挑戦
圧倒的な臨床データが支える研究力
研究は個人ではなくチームの成果
メーカーとの衝突を恐れず、改善を迫る姿勢
ネガティブデータはあえて自分の名前で論文化
かつての「敵」がパートナーになることも
P2レベルの実験室も完備し、大学レベルの研究を可能に
臨床と研究を結ぶPDCAシステム
質の高い研究を支えるスタッフの存在
インパクトファクター1066の裏にある尽きない探索心
研究力が医師を惹きつける原動力になる
コメディカルの力なくして医療は成り立たない
人材を切らずに守る──再教育への投資
父から受け継いだ「人を育てる伝統」
未来の医療を占う離島診療への取り組み
離島で緑内障と加齢黄斑変性の早期発見を目指す
離島に持ち運べる検査機器を探して
直面した大きな壁、病気が見つかった「あと」にどうするか
一難去ってまた一難、離島における医療の限界と可能性
IT技術を駆使したオンライン診療に活路
「この患者のために」がすべての出発点
第4章
住んでいる地域特性や民族遺伝子で症状の進行は異なる──
ペイシェント・ベイスド・メディスン
目の前の患者と向き合うことで生まれたPBMとは
東京では珍しいのに宮崎ではありふれた病気?
先人が切り拓いたぶどう膜炎研究の道
全国統計だけでは見えない地域の現実
紫外線と生活環境が生む翼状片の地域差
患者データから導き出した新たな治療の指標
宮田分類が導いた白内障手術の最適なタイミング
PBMから生まれた翼状片の新しい手術法
地域特性に応じて生まれたクロスリンキングの応用
抗菌薬に頼らない新たな治療アプローチ
琉球民族に多い「狭隅角」
九州と関東で異なる眼の特徴
0.1mmの誤差が視力回復を左右する
第5章
医療の道に、迷いながらも誇りを持って進むために──
臨床には医師としての喜びと希望が宿る
閉塞感を超えるカギは患者にある
探究は尽きず、挑戦は続く
AIと再生医療が切り拓く眼科の未来
いかにして5大疾病を予防するか
防げる失明を見逃さないために
「ウィンウィン」で広がる地域医療の可能性
財でも事業でもなく、人こそ未来をつくる
おわりに

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