内容説明
吹かれたいときに吹いてくれる風のないことには心おぼえがある。百子は黙って、窓を閉める。全4篇が描き出す、人生の物憂さと微光。『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』著者の初小説集。
『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』で話題の著者、初の小説集!
ゆきはひとりになって働きはじめ、私は水浴びする男を見つめ、雨の夜に三人は出会い、百子は絶望を抱えたまま暮らしている。
全四編が映し出す、人生のもの憂さと微光。
装幀=岡本太玖斗
【収録作品】
●「けだるいわあ」
唐揚げ弁当ひとつくださいと口に出す。真っ赤なエプロンの女のひとは「はあい」と愛想なく、しかし不機嫌そうでもなく、どちらかというとぽかんとした感じで返事をした。
●「水浴び」
ルーフバルコニーではおじさんが水浴びをしていた。パンツ一丁の姿で、青いホースから水をどんどんあふれさせ、頭の上からきもちよさそうに水を浴びている。
●「カリフラワー」
あの夜は小雨で、傘をささなくてもよいほどの小雨で、というより雨は、わたしが家を出たときにはまだ雨は降っていなかった。気配はあったが、気にしなかった。
●「風を飼う方法」
吹かれたいときに吹いてくれる風のないことには心おぼえがある。百子は黙って、窓を閉める。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いたろう
68
自費出版ながら1万部を販売したという、話題のエッセイ集「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」の著者、小原晩さんによる初の小説。表題作他、全4編の短編集。「ここで唐揚げ弁当を〜」を読んだ際に、この著者なら、小説も書けるのでは?と思ったが、やっぱりというところ。1編めの「けだるいわあ」が、唐揚げ弁当を買う場面から始まって、また唐揚げ弁当かい!と笑ってしまったが、全体を通じて、エッセイのように軽いタッチで、ちょっとした日常を切り取ったような、何気ない感じで紡ぎ出される言葉のセンスがいい。次は、長編小説を期待。2026/05/24
漆虎太郎
26
傷んだ日常を再生させるためには、新たに踏み出す覚悟や決意が必要なのではなく、カーテンをひらひらと揺らす微風や柔らかな木洩れ日の微光にゆだねた日常を繰り返してゆくことなんだよね、と気づかせて作品だった。乾いているのか、湿っているのか、自分でも分からないグラデーションの狭間で、出口を求め彷徨うときが人にはある。デコボコに変形した心に沿って緩やかに撫でてくれる風を、あちこちで見つけて浸ればいい。そんな時が人にはある。そうでしょ。・・・それでも、もう一歩先の展開が読みたくなってしまうのは私の欲深さなのかな2026/07/27
meg
26
ささやかな日常。 愛おしく感じられる。2026/07/24
いちろく
20
著者名をみて「あぁ、唐揚げ弁当の人だ」と気がついて手にした4編の短編集。いじわるな書き方をすると、著者名を隠されて作品だけ渡されて読んでみたら、「うん???」となっていたと思う。唐揚げ弁当の人が書いた作品であり、あのエッセイ集の既読を前提として読むと、独特な会話の応酬を含め受け入れられやすく成る感覚は、正直ズルいと思う。そういう意味で読む人ごとに評価が割れそう。2026/04/30
はる
14
「けだるいわあ」が1番読みやすく好きだった。何気ない自分の生活をそのまま切り取られてるようなひとつひとつの場面と文章がなんだか好み。表題作は心がじりじりすり減るような辛さがあったけれど自分で自分のお世話をして少し明かりが見えた気がしてほっとした。唐揚げ弁当が食べたくなる。2026/06/04




