内容説明
植民地時代の台湾に生まれた胡太明は,中国文化をルーツに持ちながら,近代的な教育を受けて成長するが,故郷では日本人と同等に扱われず,新天地を求めて渡った日本や中国でも,決して同胞とは見なされない.植民統治下の台湾人が生きた矛盾と苦悩を克明に描き,戦後に日本語で発表された,台湾文学の古典的名作.[解説=山口守]
目次
第一篇
苦棟(せんだん)の花の咲く頃
雲梯書院
古きもの新しきもの
濁流の中へ
久子
思慕たちがたく
故郷の山河
嵐の季節
彭秀才を葬う
愛と告白
青春の慟哭(どうこく )
波濤を越え
第二篇
日本留学
異郷の花
ふたたび故国へ
救いなき人びと
阿玉の悲しみ
昏迷と彷徨(ほうこう)
新生活
流離転々
大陸の呼び声
第三篇
紫金山の見える家
淑春
その後に来るもの
愛情は回帰する
相剋
一夜
風暴の前
囚われの部屋
脱出
さらば大陸
第四篇
暗い故郷
戦いの陰に
強いられた征途
この悲惨
回復期
母の死
虐げられる青春
再会
第五篇
日米開戦
新たな職場
愚かしき銃後
范の操志
虎狼の府
皇民派の悲哀
ある決意
犠牲
狂乱
再刊に際して
解説 近代台湾人の精神史を巡る旅……………山口守
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
srshtrk
5
日本統治下の台湾の「皇民化」政策で、台湾人の日本人化が求められて、そして戦時下で日本への忠誠も求められた。その状況下で暮らしている一人の台湾人の苦悩とアイデンティティを模索する姿が非常にリアルに描かれている。帝国主義や植民地主義が否定された戦後でも、「国家」や「民族」で簡単に片付けられない、個人のアイデンティティの複雑さというテーマの中に現代にも響く要素があるのではないかと思う。2022/10/30
夜吟秋月
3
映像の世紀で紹介されていた本。台湾の現代史を知るために当時の日本軍が現地で行っていたことや中国本土から敵視されていたことその後の国民政府を考えるとまさに頭の痛い物語である。五族協和は夢の中でしかなく人は自分の利益を優先させてしまう弱い生き物である。最後に発狂するしかなかった主人公を見ると「全ては何だったのであろうか」となる功と罪の物語2025/11/14
かつたま
2
私は日本と台湾の関係を誤解していたかも。外国人に対する差別は間違いなくどの国にもあったはず。ただこの主人公のようにどこにいても安らぐ場所がないのは程々辛いものだったろうな。小説 としてとても面白く読めた。最後のあれは狂ったのだろうか?2026/01/21
pyokonn
2
大明が中国で出会った張が漢字が難しすぎるから一般大衆が文盲になるという主張をする場面。 そういう思想があって今の簡体字になっているのかと合点がいった。2024/12/08
ねむ
1
台湾現代史を知っていくうえで必読っぽかったのでようやく。主人公・太明の女性に対する視線がキショい(これは昔の小説あるある)のとは別に、なんか太明のことをあまり好きになれない……と思いつつ読み進めていたんだけど、途中でこれは同族嫌悪だなと気づいた。わたしはインテリではないが太明のこの「行動しなさ」が、自分の姿を外から見ているような気持ちになって嫌だったのでしょう。2025/09/29




