内容説明
一年前、偶然出会ったお婆さんに会いたい。しかし手掛かりは、庭に沈丁花が咲いていたことと、お婆さんが発した不可解な言葉だけ――。思わぬトラブルでサッカー部を辞め鬱屈した日々を送る航大。春を告げる沈丁花の香りに、あのときのお婆さんを思い出し、記憶を頼りにその家を探していたところ、美しい庭を手入れする無愛想な大学生拓海に出会った。拓海は植物への深い造詣と誠実な心で、航大と共に謎に向き合う。植物が絡む細やかな“事件”を通して周囲の人間関係を見つめなおす、彩りと優しさに満ちた連作ミステリ。鮎川哲也賞優秀賞受賞作。/【目次】春の匂い/鉢植えの消失/呪われた花壇/ツタと密室/勿忘草をさがして
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
愛玉子
25
ある事情から無気力な高校生活を送っていた航大が偶然出会った美しい庭。その庭の手入れをする無愛想な大学生・拓海は、航大の抱える謎を植物の知識で解いていく。植物は手を掛けることで、時にはあえて手を掛けないことで、すくすくと育ち花を咲かせる。それは人も同じなのかも。ミステリとしてはやや弱い(そこそこ花好きならすぐわかる)のだけれど、心に引っかかる棘をそっと抜いてくれるような、優しい花の香りに満ちた短編集。高校入試に使われているというのも納得の、何というか濁りのない文章が清々しくて良い。続編も出たそうで、楽しみ。2026/06/12
よっち
24
思わぬトラブルで部活を辞め無気力な日々を送る高校生の航大。一年前の記憶を頼りにある家を探す最中に、美しい庭を手入れする不愛想な大学生・拓海と出会う連作ミステリ。両親からも非難され話好きな祖母・菊子と同居し、植物への深い造詣と誠実な心で謎を解き航大を導く拓海。かつて助けてくれたおばあさん、校舎から消える鉢植え、生育が悪い友人宅の花壇、ツタが絡まる密室にどう入ったのか、毎年祖父の命日近くに届く押し花の栞。静かな謎の解決は悩める人間模様の転機にも繋がっていて、穏やかな読後感をもたらす結末はなかなか良かったです。2026/03/19
huraki
11
思わぬトラブルにより、無気力な高校生活を送る航大は植物の造詣が深い大学生の拓海と出会う。植物が絡む小さな謎を通して航大自身の気持ちと向き合っていく。優しさだけでは上手くいかないかもしれないけれど、誠実な思いがいつか花開き、大切な相手へ届くことを願った。2026/04/11
都忘れ
9
貰い事故のような形で好きだった部活を辞めるはめになり、行き場のない気持ちを持て余しながら無気力に暮らす高校生・航大。一年前に出会った沈丁花のある庭の家を探す中で美しい庭を手入れする大学生・拓海と祖母・菊子と出会う。航大の話をヒントに共に沈丁花の家を探す始まりから、二人は植物にまつわるささやかな謎を通して親交を深めてゆく。草花の話題がメインなので穏やかな筆致でゆったりとした印象だが、登場人物の心情描写が丁寧で、青春の光と影のようなものも感じられてよかった。2026/05/27
フキノトウ
7
高校生の航大と、彼を助け日常の植物が絡む謎を解いてくれる大学生拓海。身近な植物が出てくるので、読みやすかった。2026/05/19




