内容説明
〈収録短歌より〉
うなずけばすこしここから遠ざかり草のちぎれた匂いしていた
揃えれば地上の夜に繋がれる足は眠りの約束だから
ワンピースは夕べの石碑 あおく、ゆれる、花柄のわたしたちを刻んで
木の実降る径は私に続きおり卵降る日々をきみと歩めり
春原に数えきれない草戦ぎすべてを踏んで婚姻をした
この歌集に流れた時間のあいだに、いくつか大事な決断をしなければいけない場面がありました。おのずと狭まると思っていた選択肢は、年を重ねるごとに増えて、後戻りできない錘が加わってゆきました。
私は自分が女性であっても、男性であっても、どんな性別をもっていても、世界のありようにやはりとまどっていたんじゃないか、と感じることがあります。このとまどいは社会や歴史や倫理へのものではなくて、もうすこし漠然とした、ここに在ることに立ち尽くしてしまう、足元にいつも吹き渡っている不可思議についてのものです。
(「あとがき」より)
目次
I
両手をあげて、夏へ
Tay,あなたへ
『Looking for Lenin』(2017)
あおく、ゆれる
のち、鳥影
II
魚は馬鹿
手と手と手
エコー
群か星
卵降る
III
一月一日
戸籍の雪
文字を彫る
オーロラ
ハイウェイ
卵丘
IV
金色堂
羊肉
気胸
鍼のひかり、痛み
粘土
V
荒行
骨と柳
山羊と兵器と女学生たち
漁
くらやみ祭り
あとがき




