内容説明
映画はその黎明から、多くが男性主体のまなざしによって構築されてきた。そこでは、女性は見られ、性的に欲望される対象である。映画が産業化されるにつれ、その観客も「見る男/見られる女」の構造を規範的な思考様式・行動規範として受容していった。映画史も主として男性の視点から語られてきたが、こうした言説の背後には無意識的なジェンダー規範がはたらいている。
映画にとって、ジェンダーやセクシュアリティ、そしてエロスの問題は切っても切り離せない。フェミニズム映画理論が私たちに教えてくれた重要な発見だ。こうした問題意識に端を発して、フェミニズムやジェンダーの枠組みを用いて映画を分析し、映画史の見方に異なる視座の導入を試みるのがフェミニズム映画批評である。
本書では、フェミニズム映画理論も含めた多様な映画理論の展開を整理したうえで、「女性と映画」「性差と映画」という問題に意識的・無意識的に取り組んだ映画監督や俳優たち、そして、撮られ、見られる存在でありながら自らもメガホンを取った女性監督たちの挑戦的な試みを紹介・批評する。
フェミニズム映画理論の視点から古今東西の映画を広く展望し、現在の映画とジェンダーに通底する問題群に考えをめぐらす。フェミニズム映画研究を牽引する第一人者の待望の一冊。
目次
まえがき
1 映画とジェンダー
『海から来た娘たち』――娘たちが語るとき、新しい黒人女性像へ
もし僕の指を……――ゴダールとフェミニズム
映画とジェンダー/セクシュアリティ
足立正生の映画とフェミニズム
既成イメージを打ち破るフェミニスト・ヒロイン
可視と不可視の間に――あるささやかな考察
反復・分身・夢――ファスビンダーの『ベルリン・アレクサンダー広場』
セクシュアリティと情念――ジャック・ドゥミ映画の「母親」
映像のフェミニズムについて私が知っている二、三の事柄
2 撮られる女/撮る女
ヒッチの陰に女性あり――ハリウッド幻想を逆手にとるヒッチコックの女性たち
フェミニスト映像作家・出光真子
フィルムメーカーとしてのオノ・ヨーコ
ドライヤーが描くもう一つの奇跡
女が書き、女が撮るとき――田中絹代と田中澄江
無愛想な監督と無愛想な女優
映画人・左幸子――女優として、監督として
アリス・ギイはなぜ映画史から忘れられたのか――『映画はアリスから始まった』
ジェンダー・トラブル・マリリン
アケルマン・マジック
カウンター・フェミニズムの攪乱――ウルリケ・オッティンガー
ニナ・メンケス――沈黙と抵抗の間
3 スクリーンとの対話
男性・女性、オトコとオンナの間――ゴダール『男性・女性』
男性か女性か、それが問題だ――ハワード・ホークスのジェンダー力学
小川プロ神話を解体する――『Devotion 小川紳介と生きた人々』
メロドラマ的身体と欲望の法則――『乳房よ永遠なれ』『乱れる』
フェミニスト・メロドラマとしての『ピアノ・レッスン』――音楽と触覚性による映像的官能性
無条件の自発性、あるいは最高の劇的な物語――ジャック・ロジエ
リヴェット効果、あるいは女性たちの連帯
初出一覧
あとがき



