内容説明
容赦なく撃つ。それが伊達邦彦の流儀だ。敗戦直後のハルビンでロシア軍による暴虐を目撃した邦彦は、怒りと虚無をその身に秘め、帰国後「死と破壊の使者」と化した。端正な相貌は狂気を湛え、警察官を撃ち殺し、現金輸送車を強奪し、冷徹な知性で大胆な犯罪計画を練っていく。冷え冷えとした銃を手に、ローン・ウルフの魂はどこへ疾走していくのか。ハードボイルドの巨匠の代表作にして傑作。(解説・吉野仁)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ねりわさび
108
2026年は大藪春彦の没後30年にあたり、字級の大きい新版本を購読。生前の本人曰く「自分が書きたかったものがハードボイルドと呼ばれているだけ」とあるように大藪文学とカテゴライズされるべきかもしれない。ストーリーは自由闊達でありながら情け容赦のない作品なので読者を選ぶかも。著者のデビュー作として興味深く読みました2026/08/13
Y2K☮
39
著者初読み。ミステリーではない生粋のハードボイルド小説。過去に読んだなかで最も近いのはダシール・ハメットか。まあ容赦ない。勧善懲悪だけならまだしも、罪もない人たちの人生まで平気で踏み躙り、用が済めば消す。松田優作が主演した映画版と重なる点もありつつ、伊達邦彦の人物像がだいぶ異なる(無論どちらがいい悪いではなく)。ただページを捲りながら「蘇える金狼」で優作さんが演じた朝倉哲也を思い浮かべたのも事実。本作の映画をプロデュースした側もそれをイメージしていたのだろう。というわけで「蘇える~」の復刊も待っています。2026/02/19
Shoji
27
情け容赦ない暴力と殺人。手段を選ばない強奪の数々。物語の展開のスピード感、ストーリーの面白さは最高。とても面白かった。2026/04/23
本の蟲
19
国内におけるハードボイルド小説の先駆者。賞で名前だけ知っている作者のデビュー作だが、これがよく読む海外私立探偵ものとは大違い。作者ものちにハードボイルドの形式にこだわっていないと述べているように、主人公は目的のために無辜の民を容赦なく殺していく犯罪小説。頭脳明晰、肉体的にも頑健な美男子と高スペックにも程があるが、その冷酷非情な性格。終戦直後の混乱で大陸に置き去りにされた経験からくる強烈な反権力思想が凄みを与えている。ピカレスクロマンというには無軌道かつ独善が過ぎ、倫理観の移り変わりと時代性を感じる2026/05/20
いかそうめん
18
恥ずかしながら大藪春彦賞の名前しか知りませんでしたが、名作と聞き拝読。現在じゃあ世間に色々と許してもらえないだろう容赦ないハードボイルド。主人公邦彦は徹底的に倫理を欠落させたサイコパス。しかし独自の正義感がダークヒーロー効果を生み出して、読者の常識まで歪ませる。IT前の時代だからこそ可能な数々の凶悪犯罪の描写があえて新鮮で、衝撃の一冊でした。2026/08/27




