内容説明
自律性、個体性、境界の自己決定、入出力の不在。これらを特徴とし、自己を産出するネットワークを不断に再生産し続けるシステム、それがオートポイエーシス・システムである。神経生理学の研究から導き出されたこの構想は、観察者の視点からではなく、システム自身からシステムを定式化しようと試みたもので、生命のみならず認知の領域をも射程に入れる。その可能性は社会学、経済学、法学、精神医学など多分野において汲み取られ、豊かな展開を遂げた。閉鎖系のダイナミクスがもたらす開放性の新たな意味とはなにか──。第三世代のシステム論のモデルを高度な記述とともに提示した独創的著作。
目次
編者による序文/謝辞/緒論(H・R・マトゥラーナ)/第一部 オートポイエーシス──生命の有機構成 H・R・マトゥラーナ/F・J・ヴァレラ/はじめに/I 生命およびその他の機械について/1 機械/2 生命機械/II テレオノミーの不要性/1 無目的性/2 個体/III オートポイエーシスの実現/1 記述的概念と因果的概念/2 分子レベルでの実現/3 起源/IV オートポイエーシスの多様性/1 単位体の条件に従属すること/2 個体発生の弾力性/3 再生産──単位体の複製/4 進化──歴史的ネットワーク/5 オートポイエーシス・システムの第二次元と第三次元/V オートポイエーシスの現前/1 生物学的含意/2 認識論的含意/3 認知的含意/付録 神経システム/第二部 認知の生物学(H・R・マトゥラーナ)/I 序/II 問題/III 認知機能一般/A 観察者/B 生命システム/C 進化/D 認知のプロセス/IV 認知機能各論/A 神経細胞/B 構築/C 機能/D 表現/E 記述/F 思考/G 自然言語/H 記憶と学習/I 観察者──認識論的、存在論的含意/V 認知の神経生理学の諸問題/VI 結語/VII 後記/用語解説/解題/訳者あとがき/文庫版への訳者あとがき/文献表
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