内容説明
釣りと酒と将棋をこよなく愛し、95歳の長寿をまっとうした井伏鱒二。情緒的にならず、ユーモアと忍耐をつねにわすれず、しぶとくも愉しげに日々を送ることの秘訣を文章のうちに溶かし込んだ──。太宰治、牧野信一、青柳瑞穂などとの長い友情をシニカルにつづった人物評も収めた、日本語を読む歓びにのびのびと浸る精選集。
目次
I/終電車/はじめて見た映画/ヘットの匂を嗅ぐ/森 外氏に詫びる件/角帽の色(早稲田)/子供のときのこと/仔犬のこと/坪内逍遙先生/II/母/牛込鶴巻町/青羽雀のおじさん/面罵の熟語/釣魚記/増富の谿谷/III/晴耕せず雨読せず/小鳥の巣/阿佐ヶ谷会/支離滅裂/牧野信一のこと/余談/眼鏡/グダリ沼/雨のいろいろ/在所言葉/時計・会・材料その他/「が」「そして」「しかし」/猫/におい/IV/琴の記/七月二十三日記/釣りの旅──釣竿・魚籃/英語について/正宗さんのこと/宇野(浩二)さんの魚釣/シンガポールで見た藤田嗣治/川/青柳瑞穂と骨董/下曾我の御隠居/解説 野崎歓/初出一覧
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
新田新一
54
井伏鱒二の随筆集。よくぞこんな本を出してくれたと筑摩書房に感謝したいです。笑っている井伏鱒二の写真が載っている表紙からして素晴らしいです。非常に抑制された筆致で書かれているのですが、一つ一つの言葉を噛みしめながら読むと優しさとユーモアが伝わってきて、豊かな気持ちになります。わずか1ページの「川」という作品が特に心に残りました。孔子の言葉を引用しながら、時代が変わっても変化しないものを表現しています。井伏鱒二が好きだった釣りのことにも言及され、とぼけたユーモアもあります。最後の一行の巧さに唸りました。2026/04/16
たくちゃん
10
井伏鱒二の作品はおそらく読んだことはないが、エッセイを読んでみた。戦前や戦中など辛い時代を過ごしていても「なんとかやっていけるでしょ」という軽快さを感じる。深刻になりすぎず、そして緩みすぎずという絶妙なバランスを保っている稀有な作家であると思う。2026/01/15
まさ☆( ^ω^ )♬
9
1930年〜1983年という長い期間に渡って発表されたエッセイの中から37編が厳選されている。長寿なだけではなく、生涯文章を書き続けたという事が凄い。まるで小説のようなエッセイもあり井伏文学を堪能できる。面白かった。2025/11/02
tepp yone
6
自分の弱点を晒して、とことん肩の力が抜けている。同時に醒めた洞察も感じられる文章。特に忘れがたいのが「小鳥の巣」で、単なるエッセイに収まらない井伏文学の真髄のような一遍。あの少年に出会えてよかった。2026/03/15
読書熊
6
味わい深い2026/02/25
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