内容説明
まともなだけじゃ、生きていけない
『万事快調〈オール・グリーンズ〉』で第28回松本清張賞を受賞しデビュー、2026年1月に同作の実写映画が公開される新鋭・波木銅、待望の新作!
『万事快調』の書き下ろしスピンオフ短篇「順風満帆〈クラウド・ナイン〉」を筆頭に、
まともなだけじゃ生きていけない現代を、必死にサバイブするあなたに贈る“劇薬”小説集!
◆収録作
・順風満帆〈クラウド・ナイン〉(『万事快調』スピンオフ)
夜な夜なクラブで開催されるMCバトルイベントで出くわしてしまった、教育実習生の私と、クラスの素行不良児。ステージ上での短い対話篇が始まる
・ラッキーパンチ・ドランカー
ラッキーでプロボクサーになった僕と、理想の恋人・りゅーちゃん。才能を見いだせないボクシングを続けるべきか、それとも……
・結局のところ、わたしたちはみな
「ぼく、漫画描いてるんですよね」馴染めないバイト先の同僚が描いているのは、“すべて嘘”の猫との暮らしだった
・フェイクファー
「裁縫は暴力の逆なんだ。だから好き」大学時代に所属していた〈着ぐるみサークル〉の仲間が自殺したらしい。でも、なぜ?
・楽園ベイベー
いじめられっこの僕を助けてくれた〈美容師兼探偵〉を名乗る謎の女・らいか。妹の行方を追う彼女に手助けを求められ……
一筋縄ではいかない現実は、裏をかいてそのまま振り切っちゃえ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
萩
51
女子高生が大麻を学校で栽培。というサイケな前作『万事快調』の粗削り感とトゲが抜けてきた今作。短編集であっさり気味だが、それでも作者の「らしさ」みたいなのは残っていて結構いい感じ。陰キャの青春グラフィティの空気感が作中に漂っている。お気に入りは①『順風満帆』→昼間は教育実習生、夜は素人ラッパーの私。最後のラップの掛け合いが胸熱イイネ!⑤『楽園ベイベー』→いじめられっ子の僕を助けてくれた女性は、いじめっ子よりヤバイ奴だった。セリフや会話の掛け合いが面白い。この話はもっと長く読みたかった。謎の連鎖が余韻を残す。2026/03/20
olive
31
面白かった。退廃的で閉塞感のある生活にうんざりしている若者。それは尾崎豊「卒業」の時代から変わらない叫びのようにも思える。でも、令和の若者は少し違う。反抗ではなく、虚無だ。人生や世界の意味に価値を見出せない若者の虚無感。夜の校舎の窓ガラスを壊してまわったりはしない。盗んだバイクで走り出したりもしない。虚無の目をした若者を通して描く。反抗の時代も、虚無の時代も。どっちも知ってそうで、どっちも知らない。どっちもわかってそうで、どっちもわからない。だから今日も、本を読むのだろう、と思えた一冊。2026/03/22
いなばさくら
22
松本清張賞受賞作依頼2作目になる作家さんの、独立した青春小説短編集。わずかにミステリ的要素もありますが、正直あまり得意ではないジャンルでした。特に第1話なんかどこに共感すればよいのか分からんレベルで理解できひん。逆に最終話は夏木志朋さんの「Nの逸脱」で1番好きな短編に似た、微妙に常識から逸脱した登場人物に激しく感動しました。ひょっとしたらわたしもそっち側のキャラで、共感しているのかもしれない。他の作品も空き時間にゆるゆる読む程度になら全く問題なし。ただ他の作品まで読むかはなんともです。2026/05/20
信兵衛
19
いずれの主人公も、今のモヤモヤっとした状況に留め置かれている、いや囚われているといった印象を受けます。 ただ、思い切り足を踏み出せば、壁を突き破れば、そこに新しい世界を見出すことが出来る、そんな雰囲気を漂わせていると感じます。2026/01/23
桜もち 太郎
18
デビュー作である「万事快調」が勢いがありとてつもなく良かったので手にした一冊。スピンオフの作品が表題作らしいけど、どこがどう繋がっていたのだろうか。まあそれはいいとして5つの短編はそれぞれが味があってよかった。「楽園ベイベー」は結局答えが謎のままなんだけれど、それはそれ。小説だからそれでいいのだろう。題名がいいのが「結局のところ、わたしたちはみな」だ。「騙し騙し、嘘をつきながら生きているわけです」が繋がる文章。どの作品も主人公たちはどことなく内向きだけれど、生き抜く術を身につけつつあるよな気がした。2026/02/19




