内容説明
なぜ、どのように、「モバイルな人びと」を研究するのか!
本書は、「移動(モビリティーズ)」の視点から現代社会を読み解く、モビリティーズ研究の入門的かつ実践的試みである。モビリティは人だけでなく、モノや情報、文化の移動も含む概念で、現代社会の構造や経験の核心をなしている。この本では特に、移動する人びとの経験や生活世界を通して、「移動論的転回」に基づく人文社会科学の知見を紹介するとともに、日本における研究の可能性と課題を探る。さらに、移動を個人の自由ではなく、社会的・政治的な力との関係で捉えることで、不平等の構造、社会変動の諸相を明らかにし、政策や実践に対する新たな視座を提示する。
目次
序章 移動(モビリティ)を通して世界を見る[伊藤将人]
第1部 創る
第1章 なぜ、移住者は「救世主」となったのか?――白書から読み解く地方移住者への政策的まなざしの変遷[伊藤将人]
[コラム①]モビリティーズ研究と政策研究をつなぐ
第2章 共につくるモビリティ――クルマ社会の先にある「再・公共移動化」の可能性[野村実]
[コラム②]研究者が政策の現場に入ってみて気づいたこと
第3章 地域活動に参加する学生をめぐるモビリティ――島根県浜田市をフィールドとしたアクションリサーチ[田中輝美]
[コラム③]学生も交通弱者だ
第4章 地球環境への配慮による観光移動の改善――フランスの環境都市におけるエスノグラフィー[吉沢直]
[コラム④]フライトシェイムを飛行機に乗って調査する矛盾
第2部 暮らす
第5章 動き続ける地域、移りゆく暮らし――長野県軽井沢町における「モビリティのパラドックス」[鈴木修斗]
[コラム⑤]「断片的な情報の組み合わせ」から始めるモビリティーズ研究
第6章 不安定と流動性を生き抜くためのモビリティ――韓国慶尚南道南海郡の若年層の移住者を事例に[金磐石]
[コラム⑥]コロナ禍のオンライン調査の経験から学んだこと
第7章 「ここではないどこか」を求めて――移動生活の魅力と葛藤[住吉康大]
[コラム⑦]日記を読むということ、読まれるということ
第3部 遊ぶ
第8章 観光者の「移動中」という実践――東京圏の鉄道におけるモバイル・エスノグラフィーの試み[安ウンビョル]
[コラム⑧]「移動を追う移動」が感じさせたこと
第9章 観光行動の「結果」を読み解く――中国における日本人バックパッカーの旅行記を資料とした試み[澁谷和樹]
[コラム⑨]ビッグデータから観光者を捉える
第10章 移動の中で結びつき、離れるやり方――ゲストハウスにおける観光者同士の交流から[鍋倉咲希]
[コラム⑩]モバイルな人びとを待つ
第11章 セクシュアリティ・モビリティーズ――戦後沖縄にみる性をめぐる移動の批判的検討[小川実紗]
[コラム⑪]モビリティから歴史を再解釈する
終章 「モバイルな人びと」に向き合う私たち[執筆者一同]
索引




