内容説明
「柳田民俗学の最大の欠陥は、差別や階層の存在をみとめないことだ。いつの時代であろうと差別や階層があるかぎり、差別される側と差別する側、貧しい者と富める者とが、同じ風俗習慣をもっているはずがない。」すべての底辺、すべての下層からその民俗を掘り起こし、人間存在の根源的病巣「差別」の起源と深層構造に迫った、民俗学の巨人・赤松啓介のひとつの到達点。人間解放の原理、平等原理に貫かれた著者のまなざしは、限りなくあたたかい。【解説:赤坂憲雄】
目次
人間差別の回想──スジを中心にして──/1 重層的差別構造/2 基層にある差別観念/3 複雑な被差別部落の起源/4 部落差別の歴史的現実/5 反宗教運動・水平社運動への参加/6 底層の実態/7 家柄願望と差別意識/もぐらの嫁さがし──昔話の階級性──/はしがき/1 朝鮮民譚もぐらの嫁探し(中里龍雄)/2 もぐらの嫁さがし(南方熊楠)/3 「もぐらの嫁探し」に就て(栗山一夫)/4 一つの解説/5 山田の白滝姫物語/6 信太の森の葛の葉/7 民衆伝承の光と影/村落社会の民俗と差別/1 はじめに/2 民俗学の開発/3 調査の階層性/4 裏街道の民俗/5 行商の様相/6 街道の茶店/7 女の民俗/8 部落調査の実態/9 村落の差別構造/解説 これは大切な、未来に属する書物である(赤坂憲雄)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
40
著者自身、(日本共産党)「講座派」の立場を支持していたと書いており、やや党派的言説が鼻につくところがある。 彼自身、戦前は「アカ」として差別を受けていたのであり、自ら差別を蒙った者としての著者が柳田民俗学へ向ける視線は、読む者がたじろぐほど厳しい。 上記のような面があるにもかかわらず最後まで読めたのは、民衆をみつめる著者の眼差しに、どこか温かいものが感じられたからだろう。 また、「夜這いの民俗学・夜這いの性愛論」の著者だけあって、農山村の性風俗を描いた箇所はとても興味深い。2019/04/06
fseigojp
26
野間・沖浦のアジアと日本の聖と賤とセットで読んだ 柳田民俗学を補完する意味で重要2016/05/06
かふ
22
『カムイ伝』を読んだ後に、ふとこの本を買ったことを思い出したのだ。差別の構造が重層化されていると思うのは、天皇制の存在だ。この本にも天皇制が我々の「心のなかに」、強固に存続しているのか?と疑問を投げかける。近頃話題の皇室の結婚問題も戦前に戻ったのかと思うぐらいに、世間が個人の自由な結婚にあれこれ意見を言う(結婚反対デモって?シェイクスピアの国かよ!)。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n639b6b0b67bb2021/11/02
Kano Ts
17
面白い。けど仮に今の世で新規に出版となると誤って広がってしまう本だと思う。いわゆる「差別語」満載や夜這いの(実体験に基づく?)豊富なエピソード。1人のフィールドワークの結果であるこの本を変に解釈せずにそのまま受け止める寛容さがないと不快な書と捉える人もいるだろう。民俗学が学問として確立する上で切り捨てられた部分がここでは描かれていると思う。だから学問として見る人は拒否感が出る。でも生なリアリティーがある。差別の良い悪いとか解消法とかそういったことではない、どんな差別が存在したかを描くフィールドワークだ。2024/06/10
ドラマチックガス
13
よく今復刊(文庫化)できたなというのが第一印象。差別用語や被差別部落の地域名がバンバン出てくる。前半は正直退屈(内容は刺激的だが、求めていたものではなかった)だったが、後半「村落社会の民俗と差別」はすごかった。柳田國男批判の痛烈さたるや。そして、現代日本に興信所が未だに残っている意味。気にする人はまだいるんだろうなぁ…僕ら以降の世代ではなくなり、完全な過去の記録になることを痛切に願う。2023/02/20




