内容説明
男子高の二年に上がってまもなく学校に行けなくなった薫は、夏のあいだ、大叔父・兼定のもとで過ごすことに。兼定は復員後、知り合いもいない土地にひとり移り住み、岡田という青年を雇いつつジャズ喫茶を経営していた。薫は店を手伝い、言い知れない「過去」を感じさせる大人たちとともに過ごすうち、一日一日を生きていくための何かを掴みはじめる――。昭和を舞台に描かれる、二度と来ない夏の日々。思春期のままならない身体と心を鮮やかに描きだす、「最初で最後」の青春小説!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
練りようかん
11
高二の夏をむかえる前に学校に通えなくなった薫。ジャズ喫茶を営む大叔父のもとに預けられるのだが、憂鬱が膨れる通学路の景色と太平洋岸の町の描写ははかなく確実性があって、氏の文章が好きだなという嬉しい実感と、岡田がたった一人の従業員になる流れにとてつもなく引き込まれた。物語は半世紀前の昭和で、学校教育と大叔父が回想するシベリア捕虜の日々が点と点でありながらひと続きに感じられる。深くわかる二人とあまり語られない岡田の強弱がよく、浮上した謎がふつっと消える解の得られ方もいい。短いけれど没入の満足感高し。面白かった。2025/12/27
ナオ
0
お気に入り作家の文庫新刊なので、即買い。美しい日本語に癒やされる。2025/12/25
gpz
0
シベリア復員兵がジャズ喫茶のオーナーとしてまだ現役でいられた時代なので、おそらく1970年代でしょうか。男子校カルチャーから弾き飛ばされた高2男子が東京を離れてみた結果として、何があったわけでもないけれど、知らないうちに少しだけ成長してましたという、書いてしまうとなんということもない筋書になってしまいますが、こういう小説、大好きです。人が使った汗まみれの剣道の防具をつけさせられる気持ち悪さを、これほどまでに赤裸々に説明した小説はおそらく世界初ではないでしょうか。2025/11/28
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