内容説明
算術の全体系を論理学によって基礎づける「論理主義」の立場を、記号を使用せずに説明した名著。『概念記法』(本著作集第一巻)の記号表記が一般に分りにくいという批評に答えて書かれたものである。 前半では、「数とは何か」という問いに対する近世および当時の数学者・哲学者の見解に詳細な批判的吟味が加えられる。後半では、数という抽象的存在をめぐる古くからの問いを、「文脈原理」に沿って、存在論的・認識論的問いから言語的・意味論的問いへと転轍することが主張されている。
目次
凡例
存在に関するピュンヤーとの対話(1884以前)[中川大訳]
『算術の基礎』(1884)[三平正明・土屋俊・野本和幸訳]
算術の形式理論について(1885)[渡辺大地訳]
フレーゲからマーティ宛(?)書簡(1882)[野本和幸訳]
フレーゲ宛シュトゥンプの書簡(1882)[野本和幸訳]
編者解説[野本和幸]
編者あとがき[野本和幸]
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
2
述語内容が主語に含まれるか否かで哲学は分析と総合を区別する。ヒュームは算術を分析的、幾何学を総合的としたが、カントは数学自体を総合的とみなした。この流れに対して著者は本書で算術の分析的地位を擁護する(著者がヒュームの「数」概念を誤解したという批判もある)。もし算術が分析的なら知識はそれ自身で拡張可能であり、ヒュームのこの区別に沿って算術を演繹可能な「定理」の位置まで高めたのが本書である。この書物がフッサールの基礎づけ主義を触発し、ラッセルのパラドックスを引き出すのは、彼のヒューム解釈に拠るところが大きい。2017/02/07
有智 麻耶
2
数学は論理学と近しい関係にあるという認識に立って、数学の証明を少しの隙間もなく遂行するべきである。しかし、現実には数というものがなんなのかすら分かっていないので、まずはここから解き明かしていきましょう、という内容。結論は、算術の基礎は、分析的かつアプリオリな一般性を持つため、あらゆるものに応用が可能なものである、ということか。「ある命題は真ではなくとも、十分無矛盾ではあり得る」(p184)再読は必須。2015/06/13
kousan
1
ヴィトゲンシュタインの著作からきた。やはり、ヴィトゲンシュタインが参考としたとだけあって、洞察力が鋭い。一例を言うと、個人的には、「否定文は結果論であり、役に立たない」という論理を第3者に説明するに困っていた。が、明快に、否定文は経験がない、という記述を見つけた。こう言った論理が描かれていたので、納得した。そのほかにも納得がいく論理が盛り沢山で、今後も再読したいと思う。2020/08/16
しお
0
算術を織り成す自然数を、自然主義・心理主義的な着想を超え、アプリオリで分析的な概念の帰属として構成することによって、思考全体での役割を判明させるに足るものとして約定する『基礎』を中心とする著作集。表題作では、主題に限らず、概念は言明の使用によって機能する、存在自体は述語ではない、概念と対象の峻別、など現代哲学を惹起した論理主義的なテーゼを提示する。これが算術法則研究の道中で必然的に呼び出されたものであることは、フレーゲの白眉だと言わざるを得ない。同書所収の『対話』も、一部のトミストにとっては劇物だが必読。2020/09/19




