内容説明
20世紀後半に実用化されたデジタル録音は、録音された音楽の本質を「情報」の状態へとシフトさせた。今日欲望されるのは、もはや音楽ファイルを所有することではなく、ネット上で利用可能な楽曲を記した〈リスト〉、すなわち「参照による聴取の可能性」である。聴取行動の変化を軸に技術と社会を巡る文化変容を描き出すメディア社会論。
目次
序 章 音楽文化の変容
1 問題の所在
2 「所有」と「参照」について
3 技術と社会の関係
4 相互影響的変化のダイナミズム
5 本書の構成
第1章 音溝からパターンへ
1 デジタル録音と音楽の「情報」化
2 アナログ録音とPCM通信
3 デジタル録音の登場
4 「情報」という概念
5 デジタル録音物の本質
第2章 音楽の象徴的支配
1 女神はなぜ少年に恋をしたのか
2 音楽と楽師の身体
3 「書かれたもの」としての楽譜
4 身体から楽譜へ
5 「魔術封じ」としての著作権
第3章 脱「モノ」化する世界
1 デジタルコピーの本質
2 「モノ」の複数化
3 インセンティブ理論
4 コピーコントロール
5 デジタルコピーは終焉に向かうか
第4章 参照とキャッシュメモリ
1 ウォークマンからデジタルオーディオプレイヤーへ
2 持ち出すもの、参照するもの
3 キャッシュメモリの性質
4 データソースへのアクセス
5 デジタルオーディオプレイヤーの二面性
第5章 利用可能性の〈リスト〉
1 ウィニーは何をもたらしたのか
2 ウィンMXとウィニーのシステム構造
3 二つのリスト
4 通信カラオケに見る〈リスト〉
5 変容する聴取体験
第6章 音楽聴取における「いま・ここ」性
1 拡大する音楽配信市場
2 「買うこと」と「聴くこと」
3 テレビCMのイコノロジー
4 サービスの特異性
5 音楽配信の可能態
第7章 コミュニケーションが主導する音楽の流行現象
1 ニコニコ動画の登場
2 流行曲とその出自
3 情報の参照と「類似者の更新」
4 ヒットの要因
5 コミュニケーションの力学
終 章 「参照の時代」の新たな音楽実践
1 「こちら側」から「あちら側」へ
2 ネットワーク・ミュージッキング
3 通信技術の現在
4 情報化する社会
5 文化を涵養する土壌
6 「参照の時代」に向けて
あとがき
初出一覧
参考文献
人名索引
事項索引
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