内容説明
ミャンマー南部、世界最大の麻薬生産地として知られる「ゴールデントライアングル」。この地域を支配する「ワ族」はアメリカや中国を出し抜き、イスラエルよりも広い領土を支配しスウェーデンよりも多くの軍隊を擁する。ミャンマーという正式な国家をも凌駕する世界最強の麻薬組織を作り上げたワ州の人々の正体とは? CIAやDEA、中国共産党といかにして渡り合ってきたのか? 血で血を洗う闘争の歴史に迫る本格ノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
124
タイ北部の三国国境地帯へ行った時、小川ひとつ隔てたミャンマーの奥地でゲリラが麻薬を栽培しているのかと思ったが間違っていた。貧しい山岳地帯ワ州に住む首狩り族を祖とする少数民族は、ヘロイン密造と密輸で生きながらも近代国家として自立を望んでいた。しかしワ州はベトナム戦争期の米中対立の最前線でもあり、支配強化をもくろむミャンマー軍事政権の圧迫もあり内部は分裂し、外国に故郷を売った権力と欲望にまみれた連中が君臨する麻薬国家ワ州が生まれてしまう。大国の都合と思惑と傲慢さに翻弄されて理想主義が潰える悲劇の記録といえる。2026/03/25
XX
13
中国・タイと国境を接するビルマ国内にワ州という国連未承認の民族国家がある。それはワ州連合軍(UWSA)が運営する国家で、収入源はヘロイン・メタンフェタミン製造を含む違法ビジネスである(黄金の三角地帯)。この本は首狩り族から始まるワ州の歴史であり、ワ州の近代化を望んで活動し挫折したソー・ルーという理想家の一代記でもある。ソー・ルーの思想を育てたのがアメリカ宣教師なら、協調しない二つの組織(CIAとDEA)の対立で結果的にワ州を麻薬カルテルの国にしてしまったのもアメリカ。その傲慢さと手際の悪さに腹が立つ。2026/03/05
V8おじさんと空飛ぶコロッケ
8
高野秀行氏の『アヘン王国潜入記』と同じ場所じゃーん、読んじゃえ~と購入。高野氏は農家に密着した非常にミクロな話だったが、こちらは証言をもとにワ州の歴史を辿りながら、アヘン・ヘロインからメスに至るまでの現在の麻薬カルテル形成と、何とか麻薬から足を洗ってまっとうな「国」として成立させようとする「スーパースター」を中心とした勢力の抵抗を描く。面白過ぎ。ドラマか映画のような一代記。アメリカという大国の一存やその内部の権力争いに翻弄されるワ州の人々に丹念に光を当てており、知らないことだらけで、スリリング。楽しめた。2025/12/03
地蔵
4
ミャンマーには<ワ州>と呼ばれる地域があり、実質的な民族国家を形成している。独自の電力網や国歌・国旗を持ち領土はオランダに匹敵、軍事力はケニアやスウェーデンをも凌ぐという。しかも東南アジア有数の麻薬・覚醒剤取引の拠点でもある。本書は、この奇妙な「国家」がいかにして成立したのかを、一人のワ人の人生を軸に描く。ミャンマーの少数民族問題、中国やアメリカをはじめとする大国の地政学的思惑などが語られ、その内容は凡百のフィクションを凌駕する。近現代史の暗部を垣間見させられる力作。2026/06/01
2000all
4
非常に面白いと同時に辛い物語だった。ワ州については知らなかったから、はじめて知る機会がこの本でなかったなら酷く勘違いしていたかもしれない。ソー・ルーの生き方に感動せざるを得ないし、達成できなかった無念はジェイコブが頑張ろうとしたように、次の世代の誰かが引き継ぎ、必ずいつか達成できると思いたい。ソー・ルーの大志と比べると矮小ないざこざが重要な局面を台無しにしすぎて腹立たしかった。徐々にワ州が良くなっていくと願いたい。2026/05/22
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