内容説明
「幕府は薩長に倒されたのではなく自壊した」「尊王攘夷が盛り上がった理由は日本人の“京都敬い”」「吉田松陰の面白さは馬鹿げていて愚直なところ」「外国人が幕末の人々に感じた頭の良さと狡猾さ」「大久保にない西郷の人間的な魅力」……『逝きし世の面影』の著者が、黒船来航で始まる激動期を独自の視座から捉え直す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
122
本書は幕末維新期を観るに際し、当時の現状と民心の有り様を第一に掲げる。長い泰平で前例踏襲の官僚機構と化していた幕府や諸藩の上層部は何もできず、豪農層と中下級武士が自然と中心になっていく。幕藩体制ではやっていけないと感じた彼らは体制転覆という大事に導いたが、どちらも経験しなかった朝鮮は自ら変革できず滅亡に至る。そんな混乱期だからこそ西郷隆盛のような革命家が力を発揮したが、自らの率いた革命が生んだ政治体制に適応できなかったのだ。歴史は一時期に必要とした人材を、不要になれば即捨てるのを繰り返してきたのがわかる。2026/05/30
KAZOO
104
在野の近世史研究家であって最近マスコミでまた取り上げられている水俣被害支援者である渡辺氏による幕末の講演会を文章化したものです。話し言葉なので理解しやすく読みやすさがあります。正式な歴史家からは若干文句が出そうなところもありますが私はこのような観点での近世史もありだと思います。2026/05/01
まーくん
89
著者・渡辺京二氏(1932-2022)は『逝きし世の面影』や『黒船前夜』などの著作で知られる在野の歴史家。本書は80年代初めに熊本・真宗寺で、若者や親しい仲間たちに対して行われた氏の「京二塾 日本近代史講義」の録音音声をまとめたもの。多くの史書と格闘して一つのまとまった考えに至たり、その成果が上記『逝きし世…』などの著作になっているという。幕末・維新の個々の出来事について細かく深く考察、それらを積み上げ全体の流れとして見た時、従来の解釈とは違った景色が見えてくるようである。⇒2026/01/05
skunk_c
68
『私の明治時代史』は本書の続編で、本来はこちらから読むべきだったようだ。「はじめに」で池澤夏樹氏が著者の略歴等を紹介しているが、予備校講師だったそうで、この語り口の上手さの理由が分かった。幕末維新のスタンダードな歴史を、45年ほど前という制約(その後の研究で色々明らかになっている)はあるものの、的確にまとめており、吉田松陰や西郷隆盛、木戸孝允、井上馨などへの評価も、自分に近いもので納得がいった。マルクス主義的唯物史観は明確に否定しているものの、その歴史内容はリベラルなもので、バランスもよいと感じた。2026/02/22
ta_chanko
26
①幕藩封建体制の崩壊②尊王攘夷吉田松陰③文久から慶応まで④外国人が見た幕末日本⑤西郷隆盛という人。マルクス主義史観とは違う視点から観た市井の歴史家渡辺京二の講義録。封建的で遅れた江戸時代という史観ではなく、機械文明以前の最高の物質文明、ひとつの完成されたシステムとして江戸時代をとらえる。果たして文明開化が日本人にとって幸せだったのか、幕末日本訪れた外国人の証言も紹介しながら当時の日本社会について論考。農民には年貢さえ納めれば干渉されない自由があったし、各藩にも幕府に反抗しない限り自治が認められていた。2026/04/01




