内容説明
〈失踪した恋人の鎮魂のために女性作家が書いた小説〉が読者を魅了するモダニズム文学の傑作「今は何時ですか?」、終戦の日の朝の列車で、午後の「重大発表」が載った新聞を売る若い女を描いた遺作「茶色い戦争ありました」ほか、作家、エッセイスト、批評家、翻訳家として読者を愉しませつづけた希代の文学者による全四篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まこみや
33
「今は…」はエッセイ風に始まり、たちまち作家が語り手となっての楽屋落ちという大枠があって、やがて作家の現実と作品の虚構とが絡み合い、夢と現の記憶が綯交ぜになるという丸谷自家薬籠中の仕掛けとなっている。「墨いろの月」は「鈍感な少年」の裏返しのようだし、「おしゃべりな幽霊」は「贈り物」の手口に似る。初期の傑作「笹まくら」から遺作の「茶色い…」まで、丸谷才一の創作の根底にあったのは、あの馬鹿げた戦争への悲憤慷慨の念であったと再確認した。2025/12/22
メタボン
21
☆☆☆☆☆ こういう作品に出合えるから読書はやめられない。流石丸谷才一。表題作は、直木賞作家浜谷百合子の出雲のお国を題材とした連載小説や、わいわい天皇という作品の批評を通じて、プロデューサー進藤南との恋愛に至る前半と、61歳の元経済企画庁長官の女性星川路代が若くして亡くなった弟の建築家をめぐる作中作の後半という構成に唸らされる。昔少年に喧嘩の仕方を教えたことがあるというエピソードを軸とした虚実皮膜な作品「墨いろの月」。終戦の8月15日の出来事を中心にこれもまた虚実皮膜な作品「茶色い戦争ありました」。 2026/01/15
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