内容説明
ある出来事がきっかけで他人が作った料理を受け付けなくなってしまった高校生の冬真は、同級生の時枝くんに「難病を抱えた美少女」の妹がいるという噂をきく。友達にそそのかされ、時枝くんの家まで行ったことがきっかけで、冬真は時枝くんと仲良くなっていくが――。一方、国際交流プラザで働く紗里は、「きれいなものが好き」なあまり、太ることへの嫌悪感を抱えていた。自分が撮影した写真が原因で時枝くんを傷つけたことを知った紗里は、“罰”としてマッチングアプリを始めて……。それぞれの理由で世界への信頼が薄くなった彼らが、大切な人と歩いていくために一歩を踏み出す感動作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
177
例えば高校生の頃の私が冬真だったとして、それでも私はきっと冬真のようには生きられない。繊細で思慮深く自分の言葉で心を伝えることが出来る冬真が素敵だ。一日にして冬真は成らずだったろうが、ともあれ大人だ。『月のぶどう』から始まった私の寺地作品。最近はあれ?って思う事もあったが(当方比)本作はどストレートに響いた。連作短編6話、程よく繋がって読ませるのが絶妙な感じで心地よかった。冬真の父や時枝の両親には多々イラッとしたけれど、タイトルに続く言葉はそれぞれが持っているのだ。私はなに?2025/12/08
Karl Heintz Schneider
152
大阪府野百合市という架空の街が舞台の短編集。私はこれまで寺地さんの小説はそれほど好きではなかったのだが、エッセイを読んでから少し感じ方が変わったように思う。「すばやく玉ねぎを薄切りにしガラスのボウルに入れる。乱切りしたじゃがいもとベーコンも一緒にバターとコンソメで味付けして電子レンジで加熱する。この料理には、名前がない。」この部分などまさにエッセイで言っていた「ナモナキ料理」そのもの。それを物語の本筋とはさして関係のない第一話のタイトル「オムレツ、あるいは」にした寺地さんのセンスにハートを射抜かれた。2026/02/02
ネギっ子gen
150
【大人の代わりをさせられている子どもは同世代の子どもと話が合わない】冒頭から「他人が作った料理が苦手」と言う高校生が登場する、目次には食べ物に因んだ6つ題名が並ぶ、連作短編集。「この夏休み、時間が許す限り一緒に遊ぶ」と誓い合う高校生男子2人。その遊びが、「この夏は、ともに焼き菓子を極めようではないか」の台詞になるところなんて、超萌え。この作家の出会いが『水を縫う』。それから新刊出るたびに追っかけてきた。どの作品も満足度高かったが、いやぁー、30冊目の今作も良かったですよ。こないな描き方ってええですなあ。⇒2026/01/18
ウッディ
139
父の再婚相手が作ったお菓子を押し付けられたせいで、他人が作った料理を食べられなくなった冬真、子供を愛せない母の言葉で傷ついた時枝君、食べることに罪悪感を感じる沙里と好きになった人と体の関係を持てない水田さん、一見、普通に見える登場人物たちは、普通を求めてくる社会の中で生き辛さを感じている。彼らは出会い、誰にも言えない心の痛みを理解してくれる存在として、親しくなっていく。一人一人は違う人間なんだから、違うことをマイナーだと切り捨てないコミュニティを見つけられれば、世界は思ったより悪くないのかもしれない。2026/08/17
まちゃ
123
二人の高校生、香川冬真と時枝綱、一人の女性、紗里。彼らの関わりから、それぞれの愛のかたちを描く。人それぞれの生き方を肯定する優しい物語。良かったです。ほたるいしマジカルランドも登場。2026/01/26
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