内容説明
宇宙が誕生してから数億年――光を放つ星も銀河もなく、ただ水素ガスが広がるだけの「暗黒時代」が続いていました。そこから、最初の星や銀河が生まれ、宇宙に光が満ちる「再電離期」へと移り変わります。では、その決定的な転換は、いつ、どのように起こったのでしょうか。
その謎を解く手がかりとなるのが、21センチ線と呼ばれる中性水素からの微弱な電波です。陽子と電子のスピンが反転するときに放たれるこの電波は、宇宙に満ちる水素ガスの「声」とも言えるもので、私たちに暗黒時代の記憶を届けてくれます。可視光では見えない宇宙の深淵を、電波という窓から覗くことができるのです。
本書では、21センチ線を用いた観測によって宇宙の黎明を探る研究を、最新の成果とともに紹介します。世界中で進む巨大電波望遠鏡プロジェクト、シミュレーションと理論の挑戦――その先に見えてくるのは、「なぜ宇宙に星や銀河が生まれたのか」という138億年にわたる宇宙進化の謎や問いへの手がかりです。
夜空を見上げる視線が変わる、最前線の宇宙物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
152
我々は宇宙とこの本をどれだけ理解できたのか? あるいはどれだけ理解できていないのか? ほとんど理解できていない。宇宙138億年の歴史では星や銀河の存在しない「宇宙暗黒時代」があり、その後、ファーストスターや初代銀河、ブラックホールが形成され「宇宙の夜明け」が始まる。それらの天体から放射される紫外線によって水素が電離する「宇宙再電離期」を経て現在の宇宙につながる。宇宙には好奇心を感じるスペースがまだまだ広大にあります。2026/03/13
やいっち
48
21cm線を軸とした宇宙暗黒時代から宇宙の夜明け、宇宙再電離期を研究してきた著者が、自身の研究分野の魅力を、現在天文学者として活動している同業者、これからの時代を担う若手研究者や学生の皆さん、さらにはより広く一般の方々に伝えたいと思い、本書を執筆したという。 2026/02/11
やす
10
Xでいろいろ天文について発言されている先生の本なので迷いなくよむ。若いころの夢をまた見ていて宇宙論の教科書をAIに手を引かれながら読んでいるのだけど本書のメインはそこでは触れられていない38万年後の晴れ上がりから再電離時代の終焉まで。ここを21cm電磁波で読み解こうという天文学の解説。本書では触れられていないけどこの21cm電磁波なかなか面白い。水素原子の陽子と電子のスピンの向きが揃ってるか逆かでエネルギー準位がことなる。その差5.9μeV。なんだその小さな単位初めてだぞ。2026/02/27
たこらった
5
LIGOの重力波検出、EHTのBH撮像以降の状況も盛り込んだΛCDM(宇宙定数項+Cold Dark Matter)理論による概説。21㎝線=中性水素原子の陽子と電子のスピンが平行から反平行へと遷移(エネルギーの高いトリプレット状態から低いシングレット状態へと安定)したときに放出される電磁波。CMB(2.73K)より2~3桁小さい値の温度。中性水素ガスの分布はDMのそれも反映(DMは重力によってHalo構造を形成)。21㎝線信号の観測でDM候補(WIMP、原始BH、ALP)モデルを検証。AI活用の具体例。2026/03/23
Hiro
5
宇宙再電離時代を解き明かす鍵となる21cm線電波に関する解説本。前提となる物理学や宇宙論の歴史を簡単に紹介しつつ、なぜ21cm線電波なのか、現時点でどこまでわかっていて、どんな課題や謎が残っていて、今後の研究の展望がどうなっていくのか、わかりやすく書かれている。入門書レベルよりは少し難しいと思うが、個人的にはちょうどよいレベルの内容だった。研究では天文学や宇宙物理学の要素が組み合わせる必要があり、また21cm線が現代の宇宙論に関する様々な未解明の謎を解く鍵になるという点で非常に興味深くワクワクした。2026/03/20
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