中世の写本の隠れた作り手たち:ヘンリー八世から女世捨て人まで

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中世の写本の隠れた作り手たち:ヘンリー八世から女世捨て人まで

  • ISBN:9784560093863

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内容説明

写本が語る、中世の人々の人生と心情

中世写本とは、書かれたテクストであると同時に、テクストの作者から写字生・画工、パトロン=注文主、後の所有者や再発見者まで、かかわった人々の個人史の集積体でもある。たとえばヘンリー八世が作らせ所有していた詩編集には、聖書を題材にしつつ当時の政治を反映した挿絵があり、王の心情を物語る書き込みがなされていた。
写本文化は、注目を集め歴史に名の残るパトロンや著者だけでなく、膨大な数の無名の人々に支えられてきた。そしてそのなかには、他人の作とされないよう自分の存在を暗号にして写本に残した人や、名前もわからないが特徴のある画風からキャリアの推測がなされている人のように、あるいは二度焼け出された本のように、さまざまな形で写本の中に人生のなにがしかが、かいま見える場合がある。本書はそうした有名無名の男女の人生と、その作品である写本の生涯を、カラー口絵とともに読んでいく。そして同時に、さまざまな女性著者の作品と、それがときに社会的地位に左右されて数奇な運命をたどった(後世の女性写本研究者の業績すら例外ではない)経緯を拾い上げた、一種の「写本にまつわる中世ジェンダー史」でもある。

[目次]
はじめに
プロローグ 羊皮紙錬成
第1章 発見
第2章 惨事すれすれ
第3章 写本の注文主(パトロン)たち
第4章 画工(アーティスト)たち
第5章 写字生と書記たち
第6章 写字生と著者の関係
第7章 隠れた著者たち
エピローグ 写本の衰退
あとがき 過去の使用と誤用
謝辞
年表
監訳者あとがき
用語集
図版一覧
文献目録
原註

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

帽子を編みます

51
面白かった。写本、修道院の写本室、修道士のイメージでしたがそれだけではなかった。羊皮紙の作り方から始まります。写本の発見、火災による滅失、ギリギリの救済。面白いエピソードの数々にのめりこんでいきます。口絵と本文とを見比べながら読む楽しさ。名もなき写字生、画工の技工。本文の著者も女性は特に来歴不明が当たり前でともすると女性が関わったという事実を消そうとする圧力。現代の研究者にも当てはまります。女世捨て人、封じ込められ一人で過ごす日々、その作品。注釈、原註、用語集などはとばしましたがじっくり読みたい一冊です。2024/04/10

翠埜もぐら

20
映画「薔薇の名前」の印象が強くて、写本と言えばトンスラ頭の修道士の仕事と言う刷り込みがあったのですが、元本の作者・写字生・画工・装丁そして写本の注文主とかかわる人たちの多彩なこと。なにより写本は元本の忠実な写しではなく、写す人の思い込みや思惑、時代的な思想のため改変され続けるものだということが驚きでした。文字になったものも口伝に負けず変化するものだって肝に銘じておかないといけないですね。それに余白は書き込むものだった。この書き込みにまた大きな価値があるって、ミステリー小説を読んでいるようで面白かったです。2024/02/26

rinakko

10
とても面白く読んだ。昔に生きた人々と今が、写本でどう結びつくのか。忘却に埋もれた庶民の姿を垣間見せ、普遍的な思いやその社会の集合的記憶を伝えてくる写本。〈画工たち〉の章では、名もなき職人集団の技に感嘆して口絵を見るのが楽しかった。〈隠れた著者たち〉の章では、自分の言葉をテクストに残せた稀有な女性たちの存在が忘れがたい。後の時代の写字生の余計なミソジニー解釈で、自作の内容を改変されてしまう女性作家マリーのこと(その流れも含めての“写本”だが)。大胆な性表現さえ臆せず使ったウェールズの女性詩人メハインのこと。2024/03/22

人生ゴルディアス

5
隙あらば女性の評価が不当だった、男尊女卑だと書くフェミ思想が無ければ、まあ60点かな…という感じだが、隙あらば女性が女性を女性でな感じなので辟易する。写本がいかに奇跡的な経緯を経て現代に伝わっているかの事例など、写本本としてよいところももちろん多々あるが、ちょくちょく挟まる著者の感想とか空想とかは特にいらないんですよ…と思う。フェミ思想が強いのも、強すぎる我と承認欲求のせいではなかろうかと思う。欲求不満感がすごい。女世捨て人(男もいたらしいが)の話は初めて見た気がする。ゆるやかな即身仏みたいなものか。2024/03/04

takao

4
ふむ2024/05/01

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