ラフカディオ・ハーンの耳、語る女たち - 声のざわめき

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ラフカディオ・ハーンの耳、語る女たち - 声のざわめき

  • 著者名:西成彦【著】
  • 価格 ¥2,500(本体¥2,273)
  • 洛北出版(2025/11発売)
  • ポイント 22pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784903127354

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内容説明

ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)、聲[こえ]の旅人、その作品と生涯へ読者を招待する。渾身のハーン論を一挙集成し、大幅に加筆&集成した「大増補&改訂新版」。たくさんの絵図・写真も掲載する。

ギリシャ、アイルランド、米国、マルチニークをめぐり歩き、1890年に、40歳を前にしてラフカディオ・ハーンは来日した。
盲目の女性芸能民の三味線、行商人の下駄のひびき、大黒舞[だいこくまい]の踊りと歌、道ゆく笛の音……。富国強兵に突き進む近代化のなかで「雑音」として切り捨てられた口承文芸の調べ、民衆の暮らしの音が、ざわめきとなってハーンの耳を圧倒する。
シンシナーティやマルチニークでの濃厚な声もまた、潮騒のようにハーンに押し寄せる。「海の声は…たくさんの声がかもしだすざわめき」なのである。
このざわめきを聴き取るために、ハーンが小泉セツに怪談を語らせるさい、彼女にこう求めた――「ただあなたの話、あなたの言葉、あなたの考でなければ、いけません」。セツのそばで耳の孔をおしひろげながら、彼は「小泉八雲」となった。
凍てつく息を男の顔にふきかける「雪おんな」。耳をひきちぎられる琵琶弾きの盲僧「芳一[ほういち]」。変わり果てた故郷の姿に絶望する「浦島[うらしま]」。
小泉セツ、女たち、病者、獣、死者がざわめく声に、ハーンは耳の奥で、何かを聞いたのだ。

【著者】
西成彦
西成彦 1955年生。立命館大学名誉教授。専攻はポーランド文学、比較文学。他の著書として、『森のゲリラ 宮澤賢治』(平凡社ライブラリー版 2004)、『ターミナルライフ 終末期の風景』(作品社 2011)、『胸さわぎの鴎外』(人文書院 2013)、『外地巡礼――「越境的」日本語文学論』(みすず書房 2018)、『多言語的なアメリカ 移動文学論 Ⅲ』(作品社 2024)ほか。また訳書として、ショレム・アレイヘム『牛乳屋テヴィエ』(岩波文庫 2012)ほか。

目次

【Ⅰ】ハーンの耳
序 文字の王国/大黒舞/ざわめく本妙寺/門づけ体験/ハーメルンの笛吹き/耳なし芳一 考
【Ⅱ】ハーンと女たち
語る女の系譜
「女の記憶」という名の図書館
【Ⅲ】ハーンと文字
文字所有者の優位から文字の優位ヘ:カフカ・ハーン・アルトー
盲者と文芸:ハーンからアルトーへ
【Ⅳ】宿命の女
「おしどり」とマゾヒズム
怪談 浦島太郎
【Ⅴ】ハーンと世紀末
ラフカディオ・ハーンの世紀末:黄禍論を越えて
ハーンを交えて議論してみたいこと

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

瀬希瑞 世季子

6
著者のこれまでのハーン論を加筆修正して再録した著者のハーン論の集大成となる一冊。ハーンとはまず「耳」の人であり、その稀有な聴覚を持って「声のざわめき」を聴き取り、身体で近代化の渦中にある日本を感じ取った。雑音として抑圧されてしまう音に敢えて耳を傾け、耳本来の受動性にすべてをゆだねたハーンだからこそ、「女の記憶」を「男の図書館」に媒介する役割を果たすことや、「生者の群れ」と「死者の群れ」のざわめきの狭間で引き裂かれる「耳なし芳一」の物語を書くことを可能にしたのだ。2024/12/13

湯豆腐

3
比較文学研究者によるハーンに関する論考集。発表年が1990年代から2020年代までバラバラなので、特に後半はテーマに統一を欠く印象を受けた。それでも、ハーンについては『怪談』のイメージしかなかったので、来日以前のアメリカ南部やマルチニーク島での活動や、熊本・神戸時代のジャーナリストとしての面などを知れて面白かった。死後蚊に生まれ変わることを「食血餓鬼」と表現するのは、ヴァンパイアの訳語として「吸血鬼」よりかっこいい。「耳なし芳一は三角関係の物語である」には、私もそう思ってたよとうなずいてしまった。2024/11/16

takao

0
ふむ2025/06/23

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