内容説明
前近代的な土着性をはらんだ「日本の前衛」、〈つくらないこと〉の呪縛としての「もの派」、岡本太郎の「爆発」、赤瀬川原平の紙幣「模造」、読売アンデパンダン、森村泰昌、村上隆、会田誠……。世界史から切り離され、忘却と堂々めぐりを繰り返す「閉じられた円環」である「悪い場所」日本において、美術の歴史は成立しているのか? 1945年=敗戦以降の美術の動向と批評の堆積を遡行し、歴史的・政治的なコンテクストに位置づける。戦後日本の精神を浮き彫りにし高く評価された、卓越した日本文化論にして著者の主著! 解説 安藤礼二
目次
第一章 閉じられた「円環の彼方」は?/第二章 九〇年代日本の「前衛」/第三章 スキゾフレニックな日本の私 I/第四章 スキゾフレニックな日本の私 II/第五章 日本・現代・美術/第六章 バリケードのなかのポストモダン/第七章 「もの派」と「もののあはれ」/第八章 裸のテロリストたち/第九章 芸術である、だけど犯罪である/第十章 日本の熱/第十一章 アンフォルメル以前/第十二章 芸術は爆発だ/第十三章 暗い絵/註/主要参照文献/あとがき/文庫版あとがき/解説 「悪い場所」を超えて 安藤礼二/口絵作品データ/索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
34
もちろん主軸を据えて語られるのは美術だが、そこから文学(水村美苗や柄谷行人など)や日本文化全般にも話を波及させて椹木野衣は「この日本」の分析を続ける。単純な「西洋かぶれ」にも、その脊髄反射的な反動としての「日本スゴイ」にも堕さない思考の強度と冷徹さはさすがで、いたずらに海外を参照せずこの国の芸術の文脈をストレンジャー(異人)の視点からまなざす椹木の態度が語る「日本」の特殊性についてもっとぼく自身も考えてみたくなった(1度しか読めてないので、まだ自家薬籠中のものにできていない)。マイルストーン的な1冊だろう2025/09/12
ばんだねいっぺい
20
探していたら、文庫化のタイミングであり、購入。非常に愉快な読書となったが、言えることは、赤瀬川さんって凄いなと、下手に芸術を語ったり、制作することが、怖いなと感じたことだ。シュミラクルという言葉が自分の中で流行の兆し2025/08/13




