内容説明
パレスチナ移民たちの心情を描く傑作短篇集。
力によって追放され、世界のどこにいようと「よそ者」として日常を引き裂かれ続けるパレスチナ人たちは、あなたのすぐ隣にもいるかもしれない。ーー安田菜津紀氏(Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)推薦!
2022年アトウッド・ギブソン・ライターズ・トラスト・フィクション賞最終候補作
母国について教えた恋人が救済活動に目覚めていく姿に戸惑う医師
かつて暮らした国への小さな投稿によって追い詰められていく数学者
ルームメイトたちに溶け込むために架空の恋人をでっちあげる大学生
正規採用と引き換えに違法なミッションを引き受けてしまう司法修習生
妻と娘のために禁断の取引に手を伸ばしてしまうプログラマー……
安住の地となるはずの国で心揺らぐパレスチナ移民たちの日々が、珠玉の9篇に。瀬戸際に追い詰められながら自らのアイデンティティを探る姿を多彩な筆致で綴る、カナダ発傑作短篇集。
(底本 2025年10月発売作品)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
45
欧米文化に戸惑うパレスチナ人の姿ーその短編集はどこか悲しく、おかしく、様々な印象を与えてくれるーこの作家、もっともっと色々なことが書けそう。私個人は最後の短編「人生を楽しめよ、カポ」に心を持って行かれました。生国との別離を経験した者の持つ複雑な感情に共感します。謝辞で著者が「力ずくで不当に自分たちの地を奪われた」ものへの想いを描いている文章が秀逸。こういう気持ち、持ち続けたいものです。また、表紙のスイカはパレスチナの国旗を思わせ連帯の象徴でもありますが、原著では皮を剝かれ、中身が露出したオレンジが表紙。2026/06/01
スイ
17
両親がパレスチナ人であり、クエートに生まれ、カナダに移り住んだ著者による、パレスチナ移民を中心にした短編集。 それぞれの短編が抜群に良く、その作品の良さと、パレスチナに生きる人々・パレスチナを出ざるをえなかった人々の苦難の両方に頭を殴られた気持ち。 描かれたどの主人公も私の頭から離れない。 特に「人生を楽しめよ、カポ」は忘れられない作品になるだろうと思う。 年の初めから、確実に今年のベストに入る一冊を読んだ。2026/01/17
くみこ
13
短編集。主人公達はカナダ在住で、パレスチナにルーツを持っています。困難な祖国に思いを寄せながらも、時にアイデンティティが揺らぐ日々。表題は、母国の話をした恋人が救済活動にのめり込み、置いてきぼりされる青年の話。周りに打ち解けるために架空の彼女を作り上げた学生や、パレスチナの歴史を絡めた祖父と孫との話など。一番ずしんと来たのは「人生をたのしめよ、カポ」です。妻子との快適な生活と引き換えにした禁断の取り引きとは。パレスチナを出たパレスチナ人の苦悩に満ちた、しばらく後を引きそうなストーリーでした。2026/05/07
まこ
10
表題作では「可哀想なパレスチナ人」ではない主人公は恋人にとってパレスチナ人ではない。海外にいるからこそのパレスチナ人としての定義があやふやになっていく。幼い頃に海外に移住したらパレスチナって何?そんなん知らないとなり、親との溝が深まる一因のような。パレスチナ人と名乗ることも時が経つことでできるようになってる2026/06/09
Erinelly
4
短編集の、最後の作品など読んでいて辛すぎて、息が苦しくなった。しかしこういう苦しみを、文学という形で、同じ経験をしていない私にも分けてもらえるというのは、幸運な事なのかもしれない。2025/12/31
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