内容説明
世界を覆い尽くす際限のない消費主義と,各地で激化する保守主義や他者の排除――.故郷喪失の感覚と故郷回帰への欲望に囚われた時代,哲学は何を示すことができるだろうか? アジアとヨーロッパを横断する哲学者がハイデガー,スティグレール,西谷啓治らとの対話を通して描き出す,〈ヨーロッパ化〉した惑星を超え出る思考
目次
日本語版へのまえがき
まえがき
前 奏 故郷喪失的立場
第一節 惑星化と故郷喪失
第二節 故郷喪失の肯定
第一章 哲学とポストヨーロッパ
第三節 ヨーロッパ哲学の精神
第四節 ポストヨーロッパの構制
第五節 思考の個体化と課題
第二章 「アジアとは何であるか」――ひとつの問い
第六節 「アジアとは何であるか」という問い
第七節 テクノロジーと比較研究の限界
第八節 思考の個体化と普遍の追究
コーダ 善きポストヨーロッパ人たち
第九節 ニーチェの後に,善きヨーロッパ人
第一〇節 魔法の舌
注
参考文献
訳者解題
人名リスト/事項リスト
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mim42
15
本作は頁数が少なく論理の妥当性判断が比較的難しいと感じた。要旨: 故郷喪失的立場の提起とポストヨーロッパ哲学の希求に始まる。総かり立て体制は絶対悪であり解消しなくてはならない(なぜ?)。ポストヨーロッパ哲学においてはテクノロジーが中心テーマとなるべき、技術多様性により欧州中心視点から脱却すべき。他の著作同様本書でも牟と西田幾多郎の東西感が援用される。困難の打開手段として二つ個体化がある。1)欲動優先の産業消費主家ににおける脱個体化に対するもの.2)思考の個体化.両立不可能性から思考の創発と多様化へ。2026/01/15
pushuca
6
欧米が世界の中心ではなくなった世界で、哲学はどう挙動すれば良いか。意欲的な哲学論。2026/01/15
森中信彦
3
日本人以外の東洋人?(中国人?ウィキペディアには「香港出身の哲学者」とされている)によるヨーロッパ文明批判の書籍なので興味を持った。 日本語版へのまえがきに、本書が日本思想に深く取り組んでいることや日本滞在時に日本人研究者と交流し、「それまでにないほどの洞察を」得ることができたことが述べられている。 なるほど、彼はこの著書で、第二次大戦中の日本に起きた「近代の超克」運動や京都学派、西田幾多郎、竹内好などの言説を正面から受け止め、批判的に評価している。 彼はかなり、ハイデガーの影響を受けていて、この(続く)2026/04/18
kentaro
3
⚫︎思想家が国民国家を乗り越えるには故郷喪失者になるしかない。つまり故郷にいない立場から世界を見るしかない。(•••)故郷喪失がこの惑星的条件を反省する立場となるのであり、世界史は故郷喪失的立場からしか見直すことはできない。(•••)故郷にいないということが意味するのはどこか別のところにいるということである。どこか別のところにいるということは故郷にいるということと対立しなければならないわけではない。むしろ故郷にいないことで、故郷にいるということと世界内に存在しているということとをともによりよく知ることが2026/04/10
鱈等
3
牟宗三、西田ら西洋哲学を独自に展開した非西洋の哲学者を参照しつつ、シモンドン、スティグレールの「個体化」を拡張した「思考の個体化」概念を提出する。頻出する弁証法という語から初めは自己が他者と出会って変容する的な話かと思ったが、デリダの引用部を丁寧に読めば、むしろ自己のうちに非同一的なものを発見して生成するという方向っぽい。同一性と生成の両面性を担う器官として、味蕾と発語機能をそなえる舌が挙げられるのがおもしろい。ただ度々強調される「故郷喪失」概念に、難民などアクチュアルな問題まで語れる射程があるのかは微妙2026/02/02
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