内容説明
第174回芥川賞&第47回野間文芸新人賞受賞作!
ここで暮らしていた人々の存在の証を、ただ、描きとめておきたい。
三田文學新人賞でデビューした注目の小説家が、傑出した完成度で紡いだあたらしい建築文学。
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いしいしんじ氏&松永K三蔵氏、推薦!
「大切に建てられた一軒の家に、ひとの気配がやどる。流れる時のすきまから、あまたの声がもれだしてくる。いつかまた、この本のなかに帰ってこようと思った。」
――いしいしんじ
「紐解かれていく「時の家」の記憶は、語られなかった想いに繋がる。物質(モノ)がこれほど繊細に語り得る小説を私は知らない。」
――松永K三蔵
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青年は描く。その家の床を、柱を、天井を、タイルを、壁を、そこに刻まれた記憶を。
目を凝らせば無数の細部が浮かび、手をかざせば塗り重ねられた厚みが胸を突く。
幾層にも重なる存在の名残りを愛おしむように編み上げた、新鋭による飛躍作。
【装幀】水戸部 功
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
273
ある古びた家。かつて施主であり建築家だった藪さん、塾をひらく緑さん、そして圭さんと修さん夫婦。3代の人々がその家で暮らした時間と記憶が、空き家となったその家で、昔、藪さんを慕った青年のスケッチする柱の藤巻きの傷や漆喰壁の凹みや亀裂、洗面所のタイルの模様や、建具の引き手などから蘇る。文章は章立てもはっきりした区切りもなくそこで生きた人々を、その時間を、その思いを、自由に横断し滔々と流れる様に静かに読み手の感情に訴えてくる。ラストの解体屋はバールで、ハンマーであらゆる物を手順通りに叩き壊す。ただ無情感が残る。2026/05/16
starbro
270
第174回芥川賞受賞作&候補作第二弾(2/5)、第174回芥川賞&第47回野間文芸新人賞W受賞作です。本書は、ある家に暮らしていた三代の住人たちの存在と記憶を綴った建築文学でした。人の一生と建物の一生は似ていると著者は言いますが、私は異を唱えます。著者が、次どう展開するかにもよりますが、このままでは売れない芥川賞作家の道を突き進んでしまいそうです。 https://www.kodansha.co.jp/book/products/00004192532026/02/23
ウッディ
149
その役割を終え、取り壊される寸前の一軒の家に入り込み、スケッチをする青年の心に目に、かつてその家に住んだ人たちの営みが見えてくる。建築士の藪さんがこだわって丁寧に建て、圭さんと脩さんという夫婦が住み、夫の赴任先から一人帰国した緑が塾を開いた家に刻まれた記憶がよみがえってくる。ノスタルジックな雰囲気は感じられるが、登場人物や 時系列が把握しにくく、とにかく文章が読みにくく、140頁あまりの薄い本なのに、時間がかかってしまった。やはり芥川賞とは相性が悪い。2026/04/28
trazom
141
芥川賞受賞時、著者が建築士であることが注目されたが、なるほど、家を主人公にし、家に語らせ、建築の細部を丁寧に描写したこの作品はユニーク。最初の住人である設計者、子供たちの塾として使った二代目、そして三代目の夫婦の物語を、青年が紡いでゆく。丁寧に描かれる建築のディテールは、記憶がディテールの積み重ねであることを教えてくれる。家が、「思い出」の切なさと「時間」の経過を教えてくれる。そして最後に家が解体される。「人間の最期と家の最期はよく似ているかもしれへんなあ」。淡くて切ないこの小説の雰囲気が、私は好きだ。2026/05/07
ふじさん
136
ある家に暮らした三代の住人たちの存在と記憶、感情がよみがえる。家主で設計者の藪さん、学習塾を営んでいた緑さん、脩さんと圭さん夫婦、それぞれの人々の人生が、淡々と丁寧に描かれていく、なんとも言えぬ味わいがある。藪さんと縁があった青年がこの家に刻まれた記憶を語る。家の床、柱、天井、タイル、壁等、目を凝らせば家の隅々が浮かび、昔の思い出がよみがえる。作者が設計士ということもあり、様々な描写が精密で家の中の様子が目に浮かぶ。一家に関わる物語が時空を超えて描かれており、今まで経験したことのない読書体験だった。2026/04/03




