内容説明
第174回芥川賞&第47回野間文芸新人賞受賞作!
ここで暮らしていた人々の存在の証を、ただ、描きとめておきたい。
三田文學新人賞でデビューした注目の小説家が、傑出した完成度で紡いだあたらしい建築文学。
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いしいしんじ氏&松永K三蔵氏、推薦!
「大切に建てられた一軒の家に、ひとの気配がやどる。流れる時のすきまから、あまたの声がもれだしてくる。いつかまた、この本のなかに帰ってこようと思った。」
――いしいしんじ
「紐解かれていく「時の家」の記憶は、語られなかった想いに繋がる。物質(モノ)がこれほど繊細に語り得る小説を私は知らない。」
――松永K三蔵
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青年は描く。その家の床を、柱を、天井を、タイルを、壁を、そこに刻まれた記憶を。
目を凝らせば無数の細部が浮かび、手をかざせば塗り重ねられた厚みが胸を突く。
幾層にも重なる存在の名残りを愛おしむように編み上げた、新鋭による飛躍作。
【装幀】水戸部 功
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
238
第174回芥川賞受賞作&候補作第二弾(2/5)、第174回芥川賞&第47回野間文芸新人賞W受賞作です。本書は、ある家に暮らしていた三代の住人たちの存在と記憶を綴った建築文学でした。人の一生と建物の一生は似ていると著者は言いますが、私は異を唱えます。著者が、次どう展開するかにもよりますが、このままでは売れない芥川賞作家の道を突き進んでしまいそうです。 https://www.kodansha.co.jp/book/products/00004192532026/02/23
ゆきねこ
120
まるで生きているかのように家が呼吸し、住んでいる人たちと共に時を過ごす。建築家が書いた小説は家が主人公。設計した薮さん。塾を開いていた緑。夫婦で住んでいた脩さんと圭さん。家の最後を見送った青年。それぞれの年代の住民が家と共にそこにいる。作者の家に対しての愛情が強く感じられる。家が破壊される場面は辛かった。悲鳴さえ聞こえてきそうだった。家は記憶と共にある。一緒に暮らす人は愛情があるから一緒にいられる。記憶がなくなってもそこにいたという事実は残る。切なくて毅然とした小説。2026/03/25
シナモン
104
家の記憶はそこに住む人の記憶。リビング、洗面所、寝室…。かつてそこにあった暮らしが静かな文章とともに浮かび上がる。建築、家という硬いイメージとひとつひとつの記憶の柔らかなイメージのコントラストが何とも言えない情緒を醸し出していた。文章が美しくて、ずっとこの世界を味わっていたかった。大切にゆっくり読みたいと思わせる一冊だった。芥川賞候補作。2026/01/05
ふじさん
94
ある家に暮らした三代の住人たちの存在と記憶、感情がよみがえる。家主で設計者の藪さん、学習塾を営んでいた緑さん、脩さんと圭さん夫婦、それぞれの人々の人生が、淡々と丁寧に描かれていく、なんとも言えぬ味わいがある。藪さんと縁があった青年がこの家に刻まれた記憶を語る。家の床、柱、天井、タイル、壁等、目を凝らせば家の隅々が浮かび、昔の思い出がよみがえる。作者が設計士ということもあり、様々な描写が精密で家の中の様子が目に浮かぶ。一家に関わる物語が時空を超えて描かれており、今まで経験したことのない読書体験だった。2026/04/03
みかん🍊
91
建築家の藪さんが心を込めて丹精に作り上げた平家、やがて塾を営む緑さん、夫婦で住む圭さんと住み継がれて空家となる、そこへ訪れた藪さんとの思い出のある青年が家のスケッチをしながら思いをはせるが圭さん緑さんの視点にころころ移り変わり、さすが芥川賞、好きなジャンルではあるがやっぱり読みにくい、家は住んでいる人間の思い出と共に有りやがて人間の様に思い出と共に朽ち果てて取り壊される、人の住まなくなった家は何故あんなにも傷み朽ちるのだろう、手入れもせず草だらけの家でも人が住んでいると違う。2026/02/25




