内容説明
代数方程式に関するガロワ理論はもっとも美しい数学のひとつと言われる。しかし、その理論が解読され、教育制度に根づくには数学者たちの多大な努力が必要であった。ガロワはまた急進的共和主義革命家としても知られた。天才数学者にして革命家―本書はその実相を描き、さらに、これまで最大の謎とされてきた死闘死の真相に迫る。決闘前夜の友人宛書信をはじめ自筆草稿を丁寧に読み、真実一路の夭折の生をまっとうした青年の稀有の生涯を再構成する。厳密な歴史学的手法を駆使し、既成の創作的伝記をトータルに超え出ようとする正伝。
目次
緒言 天才数学者と伝記作家たち/インフェルトによる1948年のガロワ伝/堅実な研究伝統──デュピュイからロスマンを経てタトンまで/本書の狙い/第1章 『赤と黒』の世界への生誕──ブール・ラ・レーヌでの幼少時代/1 ブール・ラ・レーヌの土地柄とガロワの家系/ブール・ラ・レーヌでの誕生/エヴァリストの家系と初等教育/2 フランスとヨーロッパの時代背景/ナポレオン時代から復古王政の時代へ/シャルル十世の「白」と「黒」の時代/ニュートンが生きた「天才の時代」との類比/《コラム》今日のブール・ラ・レーヌ/第2章 パリのエリート高等中学校に学ぶ/1 コレージュ・ルイ・ル・グラン/イエズス会のコレージュ・ルイ・ル・グランの歴史/ガロワ在校中のコレージュ・ルイ・ル・グラン/2 数学学習への没入/ガロワ少年のコレージュでの数学学習/エコル・ポリテクニクの最初の受験と落第/リシャール先生の薫陶/3 度重なる不運/父ニコラ・ガブリエルの自殺/エコル・ポリテクニク受験の二度目の失敗/第3章 エコル・プレパラトワールへの入学とエコル・ノルマルからの放校/1 エコル・プレパラトワールの入学試験/エコル・ノルマルの略史/ガロワの入試成績/2 エコル・プレパラトワールでの数学修業/第一学年目の講義と研究/科学アカデミーに提出された方程式論についての1829-30年の二論考/オーギュスト・シュヴァリエとの出会い/3 エコル・ノルマルからの放校/校長による退校処分/校友たちの対応とガロワの反応/第4章 7月革命──急進的共和主義者としての活動の軌跡/1 「栄光の三日間」──7月27・28・29日/王政復古体制の崩壊/「栄光の三日間」/ルイ フィリップとはいかなる人物か?/2 「人民の友の会」への加入/「人民の友の会」とは何か?/ガロワの「人民の友の会」加入/科学教育批判/ガロワの校外での高等代数学講義/3 二度の逮捕と収監/1831年5月9日「ヴァンダンジュ・ド・ブルゴーニュ」での祝宴/「ルイ フィリップに!」/1831年7月14日のデモ行進での逮捕と6カ月の禁錮刑判決/第5章 ガロワの代数方程式論の創成──「解析の解析」の企図/1 代数解析の略史/代数解析とは?/古代ギリシャの幾何学的解析/アラビア数学におけるアル ジャブルと代数解析の始まり/イタリア・コシストの遺産/ヴィエトとデカルトの記号代数/2 代数方程式論の先駆者たち/ラグランジュの「方程式解法の形而上学」(1770-71)/ルフィニによる不可能性認識/ガウスの『数論研究』(1801)/コーシーの置換群論(1815)/アーベルによる不可能性証明/3 ガロワ理論の要諦/「7つの封印」をほどこされた1831年1月論文/代数方程式の構造と根の置換群の対応/正規部分群の枢要性/《コラム》ガロワ理論の基本定理/1831年末の「序文」の理解──「解析の解析」/4 フランス数学界の権威=科学アカデミーとの確執/ポワソンの評価とガロワによるその反批判/現代的評価/第6章 決闘と死/1 一時釈放と恋愛/コレラ禍のパリ到来/ステファニーへの思慕と破局/2 友人たちへの遺言/決闘前夜/決闘の歴史的背景/シュヴァリエ宛の書簡/20歳の死/第7章 現代数学への離陸──ガロワの数学理論の行く末/1 遺作の公刊/『ルヴュ・アンシクロペディック』(1832)/リウヴィル編『ガロワ数学著作集』(1846)/2 ガロワ理論の封印を解く7人の数学者/エンリコ・ベッティの試み(1852)/セレーの『高等代数学講義』第3版(1866)/ジョルダンの『置換論』(1870)/クロネッカーの方程式論とデーデキントのガロワ理論講義/ハインリヒ・ヴェーバーの『代数学教科書』(1895-96)/3 群論のさらなる発展──クラインとリーによる新しい変換群論/クラインの『エルランゲン・プログラム』(1872)/リー群論の展開/現代のガロワ理論──ファン・デル・ヴァールデンの『現代代数学』とアルティンの『ガロワ理論』/4 数学に革命はあるか?/クーンの科学革命論/数学にも革命はある/数学における革命の一事例としてのガロワ理論の形成と制度化/アインシュタインの相対性理論との類似性/1830年革命との連動/結語 革命的数学少年の悲劇と栄光/ガロワにおける「十字架の神学」/ゲーデルの死との逆説的類似性/没後の復権と栄光/後記/書誌/索引
感想・レビュー
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