教育は社会をどう変えたのか――個人化をもたらすリベラリズムの暴力

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教育は社会をどう変えたのか――個人化をもたらすリベラリズムの暴力

  • 著者名:桜井智恵子【著】
  • 価格 ¥2,200(本体¥2,000)
  • 明石書店(2025/10発売)
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  • ISBN:9784750352527

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内容説明

ずっと前からすでに、私たちの社会では生き延びることが難しくなっていた。
――本書は、政治・経済の在り方を教育の歴史とともにたどり直し、「個人化」された社会を鮮やかに分析する。

市民社会に埋め込まれた経済原理から離れ、世界の別のあり方を構想する、今こそ必要な一冊。

目次

序章 リベラリズムの暴力
第1部 子どもと大人の現在
第1章 子どもの現在
1.「大人は自由に考えられない」
2.校内暴力からいじめへ
3.いじめのメカニズム
4.学校の「枠」をつくりだすもの
第2章 大人社会の現在
1.暴力に吸い寄せられる
2.「依存」や「生きづらさ」の使い方
3.「成長と競争」という常識
4.経済的共栄圏と植民地化
5.人々より経済
第2部 経済的教育史
第3章 戦後教育の枠組――「自己責任」の誕生
1.戦後教育の価値観
2.世界の戦後枠組み――新自由主義へのプロセス
3.日本の戦後枠組み――人的能力政策への注目
4.国民所得倍増計画と教育爆発
第4章 資本主義が求めた道徳教育
1.道徳教育批判の現状と背景
2.道徳の方針・目標(昭和二二年~平成一〇年)
3.学習指導要領の核心――資本制組織原理
4.労働力商品の再生産としての公教育
第3部 不平等の正当化
第5章 公教育における「多様化」という問題――岡村達雄を手がかりに
1.養護学校義務化をめぐる歴史的状況
2.教育改革としての養護学校義務化
3.教育の自由化・多様化をめぐる論点
4.教育の多様化をめぐる取り組み――「不登校政策」としての教育機会確保法へ
第6章 「子どもの貧困」という隠蔽――釜ヶ崎の社会史から
1.「子どもの貧困」の問題化
2.「子どもの貧困」以前――釜ヶ崎の不就学児童
3.経済界の労働者へのまなざし
4.格差と資本の構図に
第7章 ワークフェア子ども版――学習支援
1.貧困を社会的に問題化する
2.「福祉国家」の評価
3.日本の状況
4.利用される学習支援
5.「自立した個人」が招く教育化
第8章 承認論による「支援」の正当化――「能力の共同性」を再定義する
1.承認のジレンマ
2.アクセル・ホネットの承認論
3.政治経済構造という基底――ナンシー・フレイザーの反論
4.承認論の問題
5.「能力の共同性」をとらえ返す
第4部 資本と教育
第9章 能力主義を支える特別支援教育――モンスターは誰か
1.「個に応じて」最適化する
2.障害児への薬物処方
3.優生思想と私たち
4.OECDの教育戦略
5.ディストピアへの進路を変更する
第10章 EdTechとコロナショック――「なんと素晴らしい瞬間」
1.コロナ以前のEdTech
2.EdTechによる政治的・企業的再編
3.テクノロジーが全体主義を準備する
4.脱個人化という地平
終章 希望のありか――「存在承認」というアナキズム
1.参照軸としてのフーコー
2.リベラリズムの政治経済学
3.脱個人化
4.別の世界がある――グレーバーの贈り物
あとがき

索引
初出一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

小鈴

18
う〜ん。指摘したい問題はよくわかる。資本主義が要請する能力主義。リベラリズムは機会の平等を通して財の再配分を行う。教育の現場も能力主義が浸透し、過度に競争し、そこから外れた子どもは「寄り添い」「居場所づくり」として「支援」に囲い込まれる問題。不平等の問題が個人の問題と解釈され、根本的な資本主義社会を批判する視座すら持てないという指摘は重要。でも、ラストの希望の章の提案は生協運動というテンプレ感。批判は重要だが資本主義を組み替える視座を提供しているわけではない。青写真は自分で作るものというのはわかるけど…2022/04/02

きくらげ

10
以前読んだ筆者のatプラスの論考が面白くて本書に手を伸ばしたが、どうもとにかくこうなのだと見方が先行しているような論調に感じてしまった。社会が要請するリベラリズムによって教育が個人化されてしまっている、個々の支援なども学力強化に着目してばかりで社会構造自体が変わらない限りは格差を埋めるばかりか再強化してしまうなど、指摘は尤もなのだが。教育を論じるにあたって政治・社会・歴史に流れるリベラリズムからの影響を読む必要性が強調されていたように思えたのでむしろタイトルは「社会は教育をどう変えたのか」な気がした。2024/11/01

ichigomonogatari

9
資本主義社会と教育の歴史を振り返り、能力主義、自己責任が埋め込まれ、個人化した現代を分析する。教育は資本主義が求める「効率がよく従順な」労働者を育て、そのことがまた逆に新自由主義を支えてきた。能力主義から逃れるのは至難の技だと思うが、これも教育を通してそのように思わされて内面化しているのだろうか?2021/11/24

satoromance

2
★★★★★2025/08/17

Go Extreme

2
リベラリズムの暴力 子どもと大人の現在: 子どもの現在 大人社会の現在 経済的教育史: 戦後教育の枠組―自己責任の誕生 資本主義が求めた道徳教育 不平等の正当化 公教育における多様化という問題―岡村達雄を手がかりに 「子どもの貧困」という隠蔽―釜ヶ崎の社会史から ワークフェア子ども版―学習支援 承認論による支援の正当化―能力の共同性を再定義する 資本と教育:  能力主義を支える特別支援教育―モンスターは誰か EdTechとコロナショック―「なんと素晴らしい瞬間」 希望のありか―存在承認というアナキズム2021/10/15

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