時間の解体新書――手話と産みの空間ではじめる

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時間の解体新書――手話と産みの空間ではじめる

  • 著者名:田中さをり【著】
  • 価格 ¥1,584(本体¥1,440)
  • 明石書店(2025/10発売)
  • 2025→2026年!Kinoppy電子書籍・電子洋書全点ポイント30倍キャンペーン(~1/1)
  • ポイント 420pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784750352763

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内容説明

自身の手話習得および育児の体験を踏まえ、マクタガートの時間論や生と死の問題を、ろう者(手話)と産む性の視点から考察することを通して、言語モードとジェンダーの制約から人間の定義と哲学そのものを拡張する試み。

SNSや各紙誌書評で話題、忽ち重版決定!

森岡正博氏(哲学者、早稲田大学教授)絶賛!「これはユニークな本である。そもそも手話についての哲学の本が珍しいだけでなく、手話から開けてくる世界把握を、時間の流れや、出産の哲学にまで結びつけるというのはたぶん世界でも初めての試みなのではないだろうか。」

◎書評・メディア掲載◎
2021年11月3日 朝日新聞「じんぶん堂」―三木那由他氏
2021年10月30日 毎日新聞「今週の本棚」―渡邊十絲子氏
2021年10月18日 AERA「福岡伸一の読まずにはいられない」―福岡伸一氏

これまで、哲学は主に音声や文字によって表わされる言語で展開されてきた。また、その担い手の多くは、男性であった。これにより、哲学が失ってきたことも少なくないのではないか――。自身の手話習得および育児の体験を踏まえ、マクタガートの時間論や生と死の問題を、ろう者(手話)と産む性の視点から考察することを通して、言語モードとジェンダーの制約から人間の定義と哲学そのものを拡張する試み。
解説・森岡正博

目次

はじめに
第1部 手話と哲学者のすれ違い
1 声と魂の強すぎる結びつき
声と音の原理的な理解
アリストテレスの捉えた魂の仕組み
不安定な生物の分類体系
2 手話-口話論争のジレンマ
転換点
生き方への誇りとアイデンティティ
3 音象徴と図像性
鱗雲と障子紙のまだら
名前の正しさを保証するもの
声の音象徴
手話の図像性
言語の優位性という幻想
4 原始的な言語への曲解
手話と教育
明白な誤訳
不適切な引用による自説の権威化
不適切なレイアウト
曲解の背景
第2部 時間論を手話空間で考える
5 時間はリアルなのか
手話の空間に見るある哲学者の時間
時間という哲学上の謎
時間の実在性にどう切り込むか
時計を読む子ども達
天才数学者の奮闘
マクタガートの時間論の骨子
6 手話の4次元空間
手話の時空間構造
2つのメンタルスペース
マクタガートの各系列を手話の空間に再配置する
7 問題と言語形式の不一致
A系列の矛盾と困難
手話空間におけるA系列とB系列の不自然さ
マクタガートの時間論と言語形態の問題
[コラム] 日本手話のリズム
第3部 生と死の現実を産む性の視点で考える
8 誰のものでもない現実
夢ではない第1の現実
科学的に暴かれる第2の現実
力としての第3の現実
9 死ぬことと生まれること
第4の現実は出産?
出産以外の第4の現実
10 誰かの出産と私の出産、そして死
出産の類型としての死
文献一覧
解説 手話から見えてくる時間の流れと出産[森岡正博]
おわりに
初出情報

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

Mc6ρ助

15
手話と出産をテコに時間を哲学する。新聞の書評に騙された爺さまは軽く考えて読み始めたがチンプンカンプンとはこのことだった。手話は空間言語なので「俯瞰的視点」を意識しやすいという。それを「マクタガードの時間論」に当てはめると「時間は存在しない」という彼の主張のより深い解析が可能だという。さらに、出産する母の視点からは、マクタガードのいう客観的な時間軸が「過去の女性たちの体験の平均的な事例集」として存在するかもしれないなど、実は時間は存在するかも知れない・・そうだ。う〜ん。2022/01/15

ドシル

9
気軽に読むにはやや専門的。 それでも、哲学から置き去りにされてきた手話とやはり哲学ではあまり触れられない産む性、つまり女性というふたつの視点で語られた本。 個人的にはヴントの話が大変興味深かった。 「哲学者に会いに行こう」シリーズとはまた違うけれど、面白くさまざまな示唆を与えてくれた。2022/02/01

たかひろ

3
マクタガートが提起した「時間の非実在性」という問題に対して、手話や産む性(=母)といった今まで哲学界では注目されてこなかった観点から考察を行っている。 そもそも「時間の非実在性」とは何かと言うと、「時間」概念を分析してみると時間を時間足らしめる性質が浮かび上がるが、その性質は矛盾を抱えているため時間は実在しないのではないか。という主張である。 筆者はまず手話表現でもってマクタガートが行った時間の分析と性質の抽出を再演し、そこで見出されたマクタガート論の不可解な点を「産む性」という観点から解釈する。2021/12/29

rymuka

2
子どもとの共存期間が異様に長いヒトは、未来形などの時制表現を発達させた。またその表現は、音楽などの時間体験を持たない耳の聞こえない方の言語(手話)でむしろヨリ豊かである。鳥やイルカも固有な仕方で時間を持つところ「ヒトは先天的に、言語によって時間を持つ」と教えてくれる、刺激的な御本。読書録あり → http://rymuka.blog136.fc2.com/blog-entry-98.html2022/03/21

hryk

2
哲学史から不当に扱われてきた手話言語の歴史、手話による認識を基盤としたマクタガードの時間論の検討、「産む生」への着目。マクタガードの「現実」を探る筋道は読んでいて面白かった。普遍性や一般性を目指す哲学がいかに偏った視点で議論をしていたかを思い知った。いや、哲学の非普遍性についてはこれまでも思い知っていたつもりだったけれど、それすらも偏狭だったと言ったほうがいいくらい。2021/11/18

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