内容説明
排外主義と陰謀論が飛び交う欧米各地で出会ったのは、負の歴史を未来に語り継ぐための「修正」を実践する数々のミュージアムだった――
戦争責任の軽視、植民地支配の正当化、差別の否認など、都合の悪い過去を好き勝手に書き換える「歴史否認」と、新たな史料や証言の発見や視点の拡張によって、過去を反省的に継承し、より多層的なものとして語り直す「歴史修正」。
ふたつの「修正」が対立する文化戦争の時代にあって、ミュージアムはいま「真実をめぐる語り」の土台を支える場となっている。わたしたちはいま、どのようにして歴史を語り直すことができるのか。1年かけて訪ね歩いた欧米各地のミュージアムから、現代社会を捉え直すフィールドワークの旅。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Toshi
37
本書で言う「歴史修正」は、欧米(特に著者が在住する英国)の、これまで支配する側の白人男性を主役とした歴史を伝えてきたミュージアムで、マイノリティや女性の存在にも光をあて、主役とされてきた人々の功罪もより明確にしようと言う動きのことである。またミュージアムの敷居を下げる取組みも、日本の施設が参考にすべき点が多々ある。第二次トランプ政権下において、こうしたミュージアム、文化施設、図書館や教育機関に対し助成金を取り下げるなどの措置が行われていることはご存じのとおりである。2026/03/17
Nobuko Hashimoto
20
<歴史を修正する>というのは、もともとは「歴史に関する定説や通説を再検討し、新たな解釈を示すこと」。アメリカ文化やミュージアムの研究者である著者が英米などのミュージアムを巡り、観察したフィールドワークの成果をまとめたもの。これまで支配的な歴史記述に反するとして排除されてきた議論や歴史観を取り戻そうとするミュージアムの試みを専門家の知見をもって紹介する。関西ウーマンの書評で取り上げました。https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=2027012026/01/11
チェアー
6
ミュージアムはだれもが訪れる場所に常に見られるものを提供する。それだけに歴史に最前線で立ち向かっている。 まだまだミュージアムには可能性がある。それは意図してだれかが、なにかが働きかけないと発揮されない。だれがやるのか。気がついた人からやる。 2026/02/02
sayar
5
私は美術館ってとても価値ある場所と思っているのだけど、考えてみれば、ある意味ものすごく権威的な存在なのだな、特に西洋の美術館はその成り立ちからすると。モノを収集し展示するということは、誰に対し?どんな意図で?それによって同じモノでも違う意味をまとってしまうのだ。何十年も放置されてきた権威的な視座を見直そうとする海外のミュージアム。特にマンチェスター美術館の取り組みは興味深い。すべての人にとって「自分の」美術館と思えるように。それを実現するために。日本での取り組みもぜひ知りたいと思った。2026/02/26
読書家さん#AxqeAF
2
新たな歴史修正の概念で大変興味深かった。歴史に誠実に向き合う姿勢とそのキュレーションが紹介されている。特に多様性とは語られる対象の多様さだけを意味するのではなく、「誰が語るのか」「どのように語るのか」という語りの主体や構造・方法への問いをも含んでいる、というのが最も印象に残った。2026/03/18




