内容説明
日本ミステリの巨匠、横溝正史。江戸川乱歩、野村胡堂、山田風太郎ら昭和の文豪、編集者たちとの交流から、家族と過ごした貴重なお正月まで、
横溝正史の末娘である野本瑠美さんが、懐かしい思い出とともにつづります。知られざる横溝の「素顔」に迫ることができる貴重な回顧録です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
126
日本の探偵文壇史は様々に語られてきたが、その一員であった横溝正史の娘が戦前から戦後にかけての家族史を通じての回想は生々しくも面白い。多数の作品を残した横溝が実は病身で、妻の仕事は大半が看病だったとは。看護する家族を支える愛犬や、将棋の大山名人との意外な関わり。江戸川乱歩との親密な交友と、乱歩の死に取り乱し号泣する姿。角川映画にチョイ役で出て喜び、散歩中に若者からサインをねだられて困惑したり。作家同士で家族ぐるみの付き合いがあったからこそ、私生活を含めた貴重な証言が残った。いつか横溝の本格評伝が出てほしい。2025/11/12
ぐうぐう
26
娘である野本瑠美が、父・横溝正史(そして母)との想い出を綴る。横溝が病身であったことは知っていたが、ここまで終生病いと付き合ったとは知らなかった。若くして結核に侵された横溝だったが、結核菌から解放されたのが73歳の時だったというから驚きだ。病いにも負けず、戦争にも挫けず、数々の探偵小説を生み出し、晩年まで創作意欲が衰えなかったのは凄い。凄いと言えば、瑠美が語る文豪達とのエピソードにたまげる。江戸川乱歩の膝の上でよく抱っこされたという瑠美は、その大乱歩のことを「乱歩オジチャマ」と呼ぶ。(つづく)2025/10/06
まっつー(たまさか)
5
本書は横溝正史とその妻である孝子について家族が回想するという家族史・文壇史的な記録としての側面と、回想をすること自体が野本瑠美氏自身の個人史にもなっている、という側面もあるように感じた。横溝ファンが喜びそうで、また心温まる逸話も多く、読んでいて心地よかった。なんにせよ、今後とも末永く語り継いでいただきたい気持ちがあり、またそれとは無関係にいつまでもお元気でいてほしい気持ちがある2025/10/20




