内容説明
福島、沖縄、パレスチナを訪れ、不条理を強いられ生きる人々の姿を追った、著者の6年間の行動と思考の記録。
遺骨収集に取り組む2人の男性の言動を通して、歪んだ現代日本の社会構造を浮き彫りにするとともに、「未来の人の明日をつくる」ためには何が必要なのかを提示する。現地に赴き、自らの実体験から言葉を紡ぎ出した気鋭のジャーナリストの問題提起の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
115
沖縄、福島、ガザ。戦没者の遺骨が含まれているかもしれない土砂で埋め立てられる辺野古基地、犠牲者の遺体が埋まっているかもしれない場所での福島の嵩上げ工事。祈ることが精神的な慰霊なら、遺骨捜索は行動する慰霊。これは「尊厳」の問題なんだと。中央からの不条理を押し付けられる沖縄と福島に、ガザの悲劇が重なる。「ホロコースト犠牲者の国が、なぜあんな酷いことをするのか?」とイスラエルに疑問を呈する著者の思い。「中立」という欺瞞的な言葉で、現実から目を背けている私たちに、安田さんの行動力と言葉がズシリと響く。2025/07/07
ケイティ
28
福島、沖縄、パレスチナなどで不条理と向き合う人たちに迫った、著者の6年間の行動と思考の記録。安田さんが訴える「社会は踏まれている側に何かを求める」ことは、誰もが当事者になり得る。踏まれている側にその正当性を迫り、助ける価値をはかる特権意識には無自覚だ。それぞれの現状を知るという意義はもちろん、自分の在り方を省みる必要性を痛感する。それを誰より自身に問い続けている安田さんが、出会った人々に真摯に寄り添い、未来へ繋がる提示も伝える良書。この視点を基盤に世界を見て、物事を考えていこうという気づきを刻んでくれた。2025/09/21
どら猫さとっち
12
福島で、沖縄で、パレスチナで、そして東京で。生と死と向き合う人たちを追ったルポルタージュ。本書に登場する具志堅隆松氏の映画「骨を掘る男」を観たこと。著者が副代表を務めるDialogue for Peopleのラジオ番組にも本書の内容が出てくる回を聴いたことがあり、思い起こすことも多々あった。骨は死の象徴ではなく、生きたことを証明するものであること。生きる人たちがそれを見いだすことで、祈りと生きる意味を体感する。生と死がつながるとき、命の尊さを感じるのである。2025/08/04
おいも
2
これは、たくさんの人に読んで欲しいと思った。 正直、読んでいて辛くなるし、かなり厳しい現実をつきつけられる。泣きたくもなる。けど、「踏んでいる側」の自分に泣く権利あるか?泣きたいのは誰だ!?と思って涙をこらえて読んだ。 「踏んでいる側」の自分はなにができるか、分からないけど目を逸らしてもいけないし、知り続けなければ、と意識を新たにした。2025/07/27
和
1
震災による津波で大切なひとを失い、一方で原発事故で立ち入り禁止となったために遺骨を探すこともできなかった方を、著者が取材した内容が書かれています。焦点は、その方が具志堅さんに会ってどう変わったかです。沖縄と福島の両方の章から私が学んだことは、遺骨はその人が生きた証であって、遺族にとってはその人自身であるということです。本書には加えて、著者がガザ地区で取材した内容も書かれています。私の学びは、ガザでの虐殺に日本は無関係ではないことです。米国がイスラエルを支援していて、日本は米国から独立できないからです。2025/07/20