内容説明
ベイリー・ギフォード賞受賞のメモワール
終末的未来を描いた小説家、原爆開発の端緒を開いた物理学者、〈死の鉄路〉から生還した父と家族、流刑地だった国と人々の歴史を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
たま
87
父が日本軍捕虜となり泰緬鉄道と大浜俘虜収容所で過酷な取り扱いを受け、原爆投下に言わば救われたこと、原爆完成前にそれをイメージし、それを阻止しようとした人々、オーストラリアに囚人として来て「奴隷労働」に従事させられた祖先、植民者に虐殺されたアボリジニの祖先、カヤックの事故で川で溺死寸前となった自身の臨死体験。それらを創作も美化もなく、記憶の曖昧さはそのままに、思考はするが結論づけることもなく語る。「物語」の拒否として興味深く読んだ。愛を問う題名は逆説で、読者として作家に信頼されていない感覚が付きまとった。2025/11/12
ケイティ
28
日本軍の捕虜だったフラナガンの父親について当時の関係者に聞き取りをするところから物語は始まる。その連鎖反応として、本作の大きなテーマである原爆、タスマニアの原住民とヨーロッパ人の入植についての家族史、自身の臨死体験など、さまざまな怒りや問いが盛り込まれいる。それらは一見バラバラでとりとめのないようだが、チェーホフの短編から取った「第七問」のタイトルは、あらゆる人間に向けられた問いでもある。ノンフィクションだが小説のよう。何より文章がとても素晴らしく、心の深いところにしみる文学性と同時に思考が広がる大作。2025/11/10
かもめ通信
17
いくら考えても「正解」を導き出すことが出来ない問い。 作家はその作品の中で、登場人物達に、読者に、そしておそらくは自分自身にも問いかけ続ける。読み通すまで時間を要する物語だった。読んでいる間はもちろん本を閉じている時にもあれこれと考えさせられる物語だった。ようやく読み終えたとき、自分がなにひとつ理解していないことがわかる、そんな本だった。最後のページをめくってもなお、読み終えることができたという気がしない「余韻」が残る作品だった。とにもかくにもすごい本だった。2025/10/27
taku
12
形式的な推論や固定的な結論が手段にならず、それでも問い続けることの意味はなんだろう。人生は問いと共にあるから、あるいは文学としての意義や抗いが含まれているのか。自分と家族と祖先の出来事、そして原爆開発の裏面。違う次元の断面と思えることが同じところにつながっている。言葉にしがたい感情を生み、思考の淵へと誘う「語り」は珍しいものではないけど、この作者特有の感触が引き寄せる。2025/12/23
たかぴ
9
一つの筋道の物語というより、詩の散文を時間軸の大きな物語で包括してるみたい。人物名が多数出てくるし、父、母、兄など誰が誰やらに。なのに気づいたら読み進んでいた。私には良し悪しも評価出来ませんでした。2025/10/26
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