集英社新書 「日本文化論」はどう創られてきたか 戦時下のモンタージュ

著者名：大塚英志【著】

集英社（2025/09発売）

• ISBN：9784087213782

内容説明

国内外に喧伝される「日本らしさ」はどのように生まれたのか。その起源は、ロシアの映画監督・エイゼンシュテインが編み出した「モンタージュ理論」にあった。「モンタージュ」の語は映画のみならず、写真、広告、雑誌、まんがによって戦時下の日本で流行しプロパガンダのツールとして作り手と受け手に浸透した。戦時下のメディア理論と文化工作を研究するまんが原作者・批評家が、芸術理論がさまざまな文化と融合し、ファシズム的な表現に変容していくさまを分析。「創られた日本文化論」の正体を明らかにする。

目次

まえがき
第一章　モンタージュ化する「日本」
１　パリ万博とモンタージュしかない「日本」
２　寺田寅彦と昭和初頭のモンタージュ論ブーム
３　紙芝居とシネ・ポエム
４　絵巻物モンタージュ説の誕生
第二章　モンタージュとしての報道
１　報道写真と国策の実装
２　アマチュアとデータベース
３　今泉武治と原弘――プロパガンダ技術としてのレイアウト
４　報道技術研究会と「心」のモンタージュ
第三章　柳田國男と戦時下のモンタージュ
１　重ね撮り写真からモンタージュへ
２　三木茂ともう一つの「ルーペ論争」
終章　 手塚治虫と占領下・戦後のモンタージュ
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

[ドラマチックガス]

「モンタージュ」をキーワードに、戦中を中心に、日本らしさがどう描かれようとしていたのかを示す。タイトルはこれでいいのか?　「戦時下のモンタージュ」で良かった気がする（これだと意味がわからないか）。少なくとも「日本文化論がどう創られてきたか」はよくわからなかった。500頁近い大著だけれどこれだけのボリュームが必要だったのかもわからない。おそらく著者の言いたいことがほとんど受け止められなかった。残念。

2025/11/24

[spike]

タイトルやオビからは「戦前までの言論統制はさまざまな領域に及び日本文化そのものとされてきた」ことに関する本に見えるので手に取った。が、実は「モンタージュ」という技法を軸にビジュアル・映像技術を丹念に追った内容。ページ数の多さもあってかなりハードな一冊。著者の熱意というか執念みたいなものも感じられ、かなり濃密な読書は楽しめたけれど、このオビはいかがなものか、と少し思った。

2025/10/29

[キテレツ]

本書の前半は、現代でいう広告（戦時下の日本での「報道」）に使用された、モンタージュ技法の歴史的な内容で、おそらく現代広告につながる話題も多く、大変興味深く読みました。後半は、柳田的データベースと国策モンタージュ用データベースとの差異や、手塚治虫の影響を受けた現代日本における漫画・アニメの表現が、戦時下のモンタージュ論（あらゆる文化に見られる普遍的なものをベースにした理論）を元にしているからこそ世界的な普遍表現となっているのであり、それを「日本らしさ」と呼ぶことの「錯誤」について語っているのが印象的でした。

2025/10/09