内容説明
大正・昭和初期の「生活」及び生活改善運動を推進する団体の機関誌や講義録といったメディアのあり方に注目して、同時代の都市新中間層の実状あるいは〈中流〉をめぐる認識の変容との関連を、慣習行動の変化の具体相よりも日常生活を意図的に変化させていくことを目指した理念や実践の様式的特徴から論考する。
目次
序 章 本書の問題設定
第1節 問題設定の概要
第1項 生活改善運動の対象/主体認識としての〈中流〉
第2項 〈中流〉、生活改善運動と社会教育史研究
第2節 先行研究の検討と本書における考察の視角
第1項 大正・昭和初期都市部の生活改善運動に関する研究史の概観
第2項 対象/主体認識としての〈中流〉を問うことの意味
第3節 方法論的検討と概念的整理
第1項 戦略的な記述方法としての〈中流〉
第2項 言説分析、知識社会学と本書の方法論的立場
第3項 「生活改善運動」/「生活をめぐる啓蒙」の概念的整理
第4項 「啓蒙」/「運動」の含意
第5項 生活改善運動の「理念」・「実践」/マスメディアとの接合面
第4節 現代の社会教育をめぐる示唆への接続
第1項 「都市社会教育の困難」に先行する「生活改善運動の困難」
第2項 対象/主体のカテゴリーをめぐる語り
第5節 本書の構成
第1章 近代化初期日本における「生活」と〈中流〉の「発見」-概念史・認識史的概観-
はじめに
第1節 近代化初期日本における「生活」の対象化
第1項 翻訳語としての「生活」とその定着
第2項 改善されうるものとしての「生活」へ
第2節 近代化と〈中流〉の諸相
第1項 西欧における〈中流〉の多様性とその基盤
第2項 近代化初期日本における〈中流〉の「発見」の諸相
第3節 〈中流〉と「生活」をめぐる社会背景の変容-明治後期以降-
第1項 〈中流〉の「生活」と都市新中間層
第2項 農村の〈中流〉の位置づけ
小括
第2章 〈中流〉と「生活をめぐる啓蒙」の結合
-明治後期・大正前期における理念的・実践的展開の概観-
はじめに
第1節 明治後期における「社会改良」「風俗改良」と「簡易生活」
第1項 「社会改良」「風俗改良」という視線の生成
第2項 「簡易生活」の理念
第2節 明治期社会主義者の論じた「生活」と〈中流〉
第1項 堺利彦の「社会改良」「風俗改良」論における〈中流〉
第2項 明治期社会主義者たちの「簡易生活」
第3節 「生活をめぐる啓蒙」と「合理性」「具体性」「生活の質の向上」
第1項 『家庭の友』『婦人之友』と「合理性」「具体性」への志向
第2項 住宅改良と「生活の質の向上」への志向
小括
第3章 生活改善運動の興隆と社会階層への視線
-生活改善同盟会の大正期における理念・事業とマスメディア-
はじめに
第1節 生活改善同盟会設立までの動向
第1項 「生活をめぐる啓蒙」への国家・行政の注目
第2項 文部省による「生活改善」への着手
第2節 生活改善同盟会の活動形態とその提示する生活モデル
第1項 生活改善同盟会の設立と活動・組織の概観
第2項 同盟会関係者による〈中流〉への言及
第3項 同盟会の組織理念-せめぎ合う「同盟」と「社会民衆への教育」-
第4項 同盟会の意図した対象とその階層的性格
第3節 マスメディアの報じた生活改善同盟会
第1項 生活改善同盟会の動向と新聞報道
第2項 「上流階級」的なるものへの批判
第3項 同盟会と金銭的醜聞
第4項 同盟会に対する批判の構造
小括
第4章 生活改善運動における「都市」「農村」と〈中流〉
-生活改善同盟会/中央会の昭和初期における動向-
はじめに
第1節 「農村」に着目する生活改善同盟会 -機関誌の誌面分析による検討-
第1項 論説・記事の量的変化から見た「農村」の位置
第2項 対比される「都市」と「農村」
第3項 模範をめぐる「都市」と「農村」
第2節 生活改善同盟会の組織・事業改革の動向
第1項 運動方針転換に向けた議論
第2項 組織体制への批判と生活改善中央会への改組
第3項 改組後の動向
第3節 戦時体制と生活改善中央会の解散
小括
第5章 生活改善運動における〈中流〉と「無産階級」
-森本厚吉の「階級」観と文化普及会の活動の推移-
はじめに
第1節 森本厚吉の生活思想における「階級」の位置づけ
第1項 研究者/実践者としての森本厚吉
第2項 「文化生活」論と指導階級としての「中流階級」「知識階級」
第3項 社会変革の二つの経路
第2節 森本厚吉における「階級」論の変容
第1項 森本における消費経済学と階級運動論の接合
第2項 拡散する「指導階級」
第3項 「無産階級」への注目
第3節 文化普及会の事業と機関誌の動向
第1項 文化生活研究会、文化普及会の設立経緯
第2項 文化普及会の事業とその対象
第3項 文化普及会の機関誌とその変遷
小括
第6章 消費行動・流通機構変革の担い手としての〈中流〉
-大正期の商工行政と「世帯の会」による運動-
はじめに
第1節 世帯の会の設立と大正期商工行政の動向
第1項 世帯の会の設立経緯
第2項 第一次世界大戦終戦直後における商工行政の位置
第3項 商事課長・伊藤文吉と「消費者の覚醒」
第2節 世帯の会の活動内容
第1項 日用品相場調査の実施
第2項 展覧会、講演会、講習会の開催
第3項 機関誌刊行と代理部の活動
第3節 世帯の会による活動の終息
小括
第7章 「生活」に着目するマスメディアと〈中流〉の位置
-博文館による『生活』刊行の経緯と紙面の特徴・変遷-
はじめに
第1節 博文館の出版事業の展開と『生活』の刊行
第1項 活字メディアによる「生活」への注目
第2項 明治中・後期における博文館の隆盛と停滞
第3項 『生活』創刊の直接的契機
第2節 雑誌『生活』と諸階層の「生活」-誌面分析による検討-
第1項 『生活』の刊行状況と誌面構成の概要
第2項 『生活』における〈中流〉の振れ幅
第3項 網羅的に捉えられた「生活」
第4項 『生活』の廃刊
小括
第8章 「個別化した生活者としての〈中流〉」と共同性の構築
-「生活をめぐる啓蒙」のメディアとしての婦人雑誌とその変容-
はじめに
第1節 婦人雑誌と「生活をめぐる啓蒙」
第1項 「生活をめぐる啓蒙」における婦人雑誌の位置づけ
第2項 「教養派」/「実用派」の区分に関する論点
第2節 婦人雑誌における〈中流〉の「生活」
第1項 「教養派」/「実用派」の境界の揺らぎ
第2項 婦人雑誌上に表れた〈中流〉認識とその変容
第3項 「実用派」への近接-生活関連記事と相談欄-
第3節 読者との交流/読者の共同性
第1項 読者系列化事業の展開
第2項 読者グループ結成への呼びかけ
第3項 大衆化への「抵抗」としての読者グループ活動
小括
終 章 総括と展望
第1節 「社会の中堅・主導層」から「個別化した生活者」へ
第1項 前章までの議論の総括
第2項 歴史的把握の構図
第3項 残された課題と考察の拡張可能性
第2節 歴史的考察と実践的展望の接点
第1項 都市化社会における私事性/共同性/公共性と社会教育
第2項 自明視された対象/主体カテゴリーの問題性
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