内容説明
第二次大戦の癒えぬ傷を抱く学生たちの一夏を描く初期作品から、晩年の知的企みに満ちた意欲作まで。ひたすらに真実を求める人生の陰翳を描き出す精選六篇。生誕一〇〇年記念出版。全二巻。
今回、生誕一〇〇年を記念して、この膨大な作品群から四六判二巻本のアンソロジーを編む役割を仰せつかった者としてみずからに課したのは、できるだけ幅広い時期から選出すること、執筆時期や舞台が異なっても相通じる要素のある作品を二作ずつ組んで流れをつくり、その色合いと感触で陰と陽にふりわけることだった。最初にお届けする本書『鳥たちの横切る空』に翳り「Ombre」、次巻の『竪琴を忘れた場所』に明るみ「Lumi re」と副題を付けたのはその結果である。
(堀江敏幸「空に織り込まれること――『鳥たちの横切る空』解説にかえて」より)
(目次から)
洪水の終り
聖堂まで
献身
探索者
叢林の果て
鳥たちの横切る空
空に織り込まれること――『鳥たちの横切る空』解説にかえて(堀江敏幸)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
93
かなり昔に私の好きな北杜夫さんの親友である辻邦生さんの作品もかなり読んだものでした。ただ長編が多く今回堀江敏幸さんによって2冊にまとめられた短編選集は忘れてしまったのかもしれませんがはじめてのような感じでした。6つの作品が収められていますが舞台が海外の様々な地域での話で若干結末などが暗めの感じのものが多いようでした。堀江さんの解説が参考になりました。2026/04/07
ソングライン
14
パリに留学中の青年が夏季セミナーで出会ったひ弱な影のある女学生に抱く想いと病める彼女の精神を救えなかった後悔を描く「洪水の終わり」、放浪の末難病を発症し余命いくばくもない兄の無念に寄り添う妹「献身」その他スペインとメキシコの革命に身を捧げる男女を描く数編が載ります。死が必ず訪れる運命の人間の生の輝きを静かに描く作者の短篇集です。2026/02/12
yuki
6
辻邦夫さんの短編集。とくに「洪水の終り」がよかったです。過酷な体験を経た人間の苦しみ…「私たちが目撃し証人となるべく強いられたすべてに対しはっきり眼を開いていなければならない」という言葉は今の時代にこそ大切な考えだと思いました。2026/05/14
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